ポケモンXY感想−87話目
第87話 「ユリーカお世話です! 甘えん坊のチゴラス!!」
夜。
久々にロケット団が、それっぽい犯罪行為を講じた。
カロス発電所にせよボール工場にせよここにせよ、カロスはもう少し防犯意識を持った方がいいと思わざるを得ない今日この頃。
首尾よくチゴラスを盗み出したロケット団。26㎏を軽々と背負うコジロウ。どちらかと言うと、この大きさで26kgと言う方が驚きだが。
どうやらロケット団、チゴラスを手懐け、ガチゴラスに進化させ、戦力に加えたかったようだ。要するに前回のファイヤーと同じこと。
気球に乗せてしばらくすると、チゴラスが目を覚ます。
当然暴れる → 落ちた。ロケット団よ、なぜ檻や捕獲ネットを使わなかったのか……。
一方サトシたちは、森の中で野宿中。野宿の様子が明確に描かれたのは、案外久しぶりかもしれない。
しかし相変わらず、ショートカットのセレナのパジャマ姿は見せてくれないのであった。なんでやねん。
ユリーカ 「ふぁぁぁっ……お水……あった」
目が覚めたユリーカは、水を飲もうとするも水筒は空。
ダイノーズ水筒という新しいグッズの登場だが、もう少し可愛いポケモンで商品化させるべきではと思ってしまう。
仕方なく、近くの清流で水を汲み、喉を潤すユリーカ。
そんな彼女の視界に、川の真ん中で岩に嵌っているチゴラスが飛び込んだ。
ユリーカ 「わぁっ……大変! いま助けてあげる!」
躊躇いなく川に飛び込み、ユリーカはチゴラスを助け出した。
ユリーカ 「もう大丈夫よ!」
チゴラス 「ちご? ちごぉぉぉ」
偶然ながら、ユリーカのパジャマはガチゴラス。
そのお陰でチゴラスは警戒することなく、ユリーカに懐いたのであった。
明朝。
ユリーカ 「お兄ちゃんお兄ちゃん! お兄ちゃんってばー!」
寝起きドッキリよろしくサトシとシトロンにチゴラスでモーニングコール。
ビビるシトロン、間をおいて驚くサトシ、ピカチュウも警戒態勢、はしゃぐチゴラス。
ユリーカはサトシたちに、ことのあらましを説明した。
そこでハッとする。ユリーカの声、変わってない?
そう言えば今回から(正確には第86話の次回予告から)、ユリーカの担当が一時的に かないみかさん だったっけ。
86話の次回予告では違和感たっぷりだったが、今頃になって交代に気付くほど、その違和感は驚くまでに薄れていた。これが声優さんの力……!
チゴラスと言えば、ショウヨウジム戦でザクロが使っていたポケモン。図鑑を向けたものの、サトシは覚えていたようだ。
シトロン曰く、野生のチゴラスは相当珍しいとのこと。……そりゃあ、盗まれたポケモンですから。
けれど、それは即ち、ユリーカとチゴラスの別れが確定していると言うことでもある。まだ始まって数分の段階だが、ユリーカはチゴラスと離れ離れになってしまう――。これから仲良くなっていくであろう2人に、予め、視聴者は現実を突きつけられているのだ。
どことなく、アニメ版フランダースの犬に似たものを感じてしまうのは、私だけだろうか。
ガチゴラスパジャマのお陰で、チゴラスはユリーカにべったり甘えん坊。
自分より小さいにも関わらず、ユリーカのことを親とでも思っているかのようだ。
ユリーカに噛みつこうとして怒られ……泣いた。
はしゃいで転んで……泣いた。
普通に考えれば“可愛い”分類には入らないであろうチゴラスを、ここまで可愛く魅せるアニポケは凄いと思う。
その後もユリーカは、チゴラスにブラッシングしたり、歯を磨いてあげたり、体を拭いてあげたり、一緒に遊んだり、ポフレを食べたり。
セレナ 「すっかりお母さんね、ユリーカ」
ユリーカ 「違うよ。トレーナーだよ。ねー!」
チゴラス 「ちごぉ!」
ユリーカほどの小さい子にしてみれば、完璧ともいえるチゴラスへのお世話。
ピカチュウやデデンネ、その他ポケモンたちの世話を手伝っている経験が、こういう所で役に立っている。
でだ。
そんな平和な時も束の間、チゴラス(及びその上に乗っていたホルビーとデデンネ)が落とし穴に嵌ってしまったのだ。
犯人はロケット団。……あれ、落とし穴作戦って久々じゃね?
そして、助けようとしたユリーカもろとも、ロケット団に捕まってしまった。幼女誘拐事件、ここに発生。
ロケット団に煙幕を撒かれたため、サトシたちはどうすることも出来ず、ロケット団を見す見す逃がしてしまう。
サトシはファイアローとオンバットを動員してロケット団の捜索に当たらせるが、ファイアロー、進化して最初の活躍はやはり雑用であった……。
一方、捕まってしまったユリーカは、チゴラスは自分がキープするんだと一歩も引かない。
自分たちが先に捕まえたんだと怒鳴るムサコジ。しかしそんな2人にキレたチゴラスが、縄を食い千切り、脱出に成功する。最近のロケット団にしてはザルだった。
デデンネとホルビーが一緒に捕まっていたことが幸いし、パンプジンとマーイーカの攻撃を かいくぐり、逃げ出すことに成功。
割かしどうでもいいことだが、攻撃時のよく分からん背景復活は、どんな意図があったのだろうか。
ユリーカは、恐るべきポテンシャルと作戦をもって、ロケット団を翻弄する。
具体的にはホルビーに穴を掘らせてモグラ叩きの要領で顔出したりひっこめたりしたのだが、これ実は、先ほどチゴラスと遊んでいた時の応用だ。
咄嗟にこういった手法を思いつくのは、ユリーカの子供らしさの賜物であろうし、また、チゴラスと言う、自分が守るべき存在が居ると言うことも、ユリーカを動かしたのかもしれない。
しかしながら、相手は大人、ロケット団である。
逃げた先で待ち伏せされ、バトルでデデンネとホルビーは戦闘不能に。やはり本来のトレーナーの指示でないと、ホルビーでも100%の力は出せなかったようだ。
ロケット団は、気球から超合金のアームを繰り出すと、チゴラスを鷲掴み。このまま回収するつもりだ。
ユリーカも黙ってはいられない。ホルビーとデデンネがダウンした今、チゴラスを守れるのは自分だけ――。そんな想いが大きかったのか、危険を顧みず、チゴラスを掴むアームに飛びついた。
いくら怖いもの知らずのユリーカであっても、これは危ない。
それだけチゴラスを守ろうとするユリーカの強き想いを感じられるが、これほどまで小さい子が、身を挺してまで危険い立ち向かう必要があると言うのだろうか。……多分サトシのスキルが移ったんだと思うが。
そしてロケット団は、信じられない行動に出る。
ユリーカ落としたぞ!?
これはアカン! 小さい子を高所から落とすなんて、命の危機に繋がるぞ! サトシならまだしも相手はユリーカだぞ!?
その時。
信頼する仲間のピンチを目の当たりにしたチゴラスの体が光に包まれた。
進化した。
甘えん坊だったり泣き出したりして精神年齢的にまだまだ子供だと思っていたチゴラスが、ガチゴラスに進化した!
ガチゴラスはロケット団のアームを噛み砕いて脱出し、ユリーカを しっかりと抱き留めた。
ガチゴラスなりの恩返しが出来たのではないだろうか。先ほど遊んでいる最中、ユリーカを持ち上げようとしたチゴラスは、「もっと大きくなってから」とユリーカに止められた。それが伏線――という訳ではないが、そういった背景があったからこそ、チゴラスはガチゴラスに進化し、ユリーカを助けられたのだと思う。
サトシたちも駆けつけ、バトルに加勢……することなく、ガチゴラスの突撃で、ロケット団を撃退した。ここまでサトシたち、ほとんど出番なしである。
吹っ飛ばされたロケット団は……、どうしたんだよ!?
無印時代ですら見たことの無い崩れ作画で消えて行った。
ガチゴラスの活躍に喜ぶユリーカ。勿論、ガチゴラス本人も。
チゴラスの時と同様、ユリーカとゴロゴロするガチゴラス。まさかガチゴラスを可愛く感じることがあろうとは……。
マーベラス研究所のガブリアスもそうだったが、本当にアニポケは、予想外のポケモンを可愛く描くのが上手い。
そして流れは、もはやキープ。
セレナ 「いいじゃない。こんなに仲が良いんですもの」
サトシ 「賑やかになるな」
ピカ 「ぴかぴか!」
シトロン 「ガチゴラスの面倒、ちゃんと見るんですよ」
ユリーカ 「見る見る! あたしがお世話する! ガチゴラス、これからずっと一緒よ」
完全にシトロンがゲットする流れを作っておきながら、実際、ガチゴラスはボールに収まらなかった。
ユリーカ 「なんで? 壊れてるの?」
シトロン 「いや……このガチゴラスには、既にトレーナーが居るんだよ」
ユリーカ 「えぇっ!?」
そんな矢先、化石ポケモン研究所の研究員と名乗る人物が現れた。ザル警備の元凶か。
もともと、化石ポケモンが野生で、もとより一般に生息しているなんて、おかしな話だった。原作でも、化石を復活させてゲットするポケモンなのだから。
……なんでザクロはチゴラス持ってたんだろ?
保護してくれたお礼にと、研究員から、化石研究所に招待されることになったユリーカたち。
しかしこの時、ユリーカは別れを悟っていた。そんな状況で、笑顔で研究所を見学できる訳が無いのだ。
サトシ 「それって、面白そう!」
シトロン 「きっと色んなポケモンが居るぞぉ!」
セレナ 「ねぇユリーカ。みんなで研究所を見に行こうよ。ねっ?」
ユリーカ 「………」
ここから始まっている、サトシたちの優しさ。
ユリーカを元気づけようと、彼らなりに、明るく振る舞っていたのだ。
サトシ 「わぁ……プテラだプテラだぁ!」
シトロン 「ナイスな体験ですぅ。滅多に見られないよ!」
ユリーカ 「………」
プテラに喰われそうになったり、アルトマーレで襲われそうになったりと、プテラに対して良い思い出が無いはずのサトシが興奮している当たり、やはりこれは、ユリーカへの気遣いなのだろう。
シトロン 「ユリーカ見て見て! カブトだよ! 全部本物なんですよね。凄いなぁ!」
サトシ 「ほら、ユリーカ。見てみろよ」
ピカ 「ぴかちゅう!」
ユリーカ 「………」
ポケモン世代の視聴者的に見ると、カブトが出てくる話と言うのはトラウマが多い……。赤い月に向かうカブトとかなんやねんアレ。
そんな感じでユリーカを元気づけようとするも、彼女の気持ちは晴れず、これにはサトシたちも困ってしまう。
けれど、それは本人が乗り越えなければならないことだ。
研究所の仲間とたちと楽しそうに触れ合うガチゴラスの姿を見て、ユリーカは決心する。
1日にも満たないものの、ガチゴラスとの思い出が、ユリーカの心の中で鮮明に蘇る。
ユリーカ 「……あなたは甘えん坊だけど、ガチゴラスになったんだから、もう甘えちゃダメなの。研究所の人に、迷惑かけないでね」
ガチゴラス 「ごるる……」
ユリーカ 「この子、これやってあげると喜ぶから、お願いします」
研究員 「ありがとう。大切に使わせて貰うね」
ユリーカ 「元気でね、ガチゴラス……」
ガチゴラス 「がるっ……」
ユリーカ 「ダメッ! あなたはこの家の子なの! 着いて来ちゃダメッ!」
そうしてセレナに泣きついたユリーカ。
立派だったよ、ユリーカ。自分の願望を通すことなく、ガチゴラスとお別れできて。
ガチゴラスに伝えた言葉も、まるでお母さんのよう。こうしてユリーカは、大きく成長していくんだね。
ユリーカ 「じゃあね……ガチガラスっ」
ガチゴラス 「がるぅっ……」
笑顔でお別れするユリーカは、本当に強い。強くなった。
フラベベの経験が活かされているのか、小さいながら、ポケモンのことを第一に考えることのできるユリーカは、本当に偉い。
きっとこの旅で、ユリーカは成長を続けている。
そしてそれは、そんなユリーカを見守るサトシたちもそう。お互いが刺激し合い、想い合い、助け合うサトシたちの旅。
こうしてまた一つ、彼らの絆が深まったに違いない。
● 総括
ストーリー的にどうしてもフラベベ回と比較してしまうが、バトル含め完全にユリーカ回だった。ここまでサトシたちが干渉しなかったのも珍しい。
チゴラスとの触れ合いが密だった分、ユリーカにとって別れは辛かったはずだが、フラベベとの経験が、ユリーカを成長させていたと伺える。でなければ、あんな親のような言葉はかけられないだろう。
なお、声優さん変更による違和感は、予想外にあまり感じられなかった。
● 次回ひとこと予告
→ “シトロンとホルビーの名コンビ!”……失礼ながら名コンビと感じたことは無い(笑)