ポケモンXY感想−71話目

第71話 「運勢最悪? ユリーカ対ニャース!!」


 クノエシティへの道中、久々に全ポケモンを出して休憩中のサトシたち。
 そんななか、セレナは携帯端末で今日の運勢をチェック中。それを覗いてユリーカも運勢チェック。こういったことに興味を示すあたり、2人ともとても女の子らしい。


 しかし、だ。

  セレナ 「ユリーカのは……、今年の中でも一番最悪な運勢。地獄の底に叩き落される……ゴールドカラーに注意……」

 なんか凄まじいこと言われてるぞユリーカ!

  ユリーカ 「うぇぇなにそれ……」
  セレナ 「占いなんて良い事だけ信じてればいいのよ。気にしない気にしない!」

 まぁ、セレナの切り返しも含めて、やはり女の子らしい。
 しかしここ一帯、細密な描写に定評のあるXY編にしては珍しく、セレナとユリーカ以外が静止画だった。制作時間足りなかったのかな?


 一方上空では、リンゴを満載したロケット団の気球が。近くの木から回収したらしいが、もう既に嫌な予感しかしない。

 で、サトシたちを見つけ、いつものようにピカチュウたちを奪おうと攻撃……したのだが。



 突如ゴロンダの襲撃に遭い、みな一目散に逃げる。

 そうして出来た組み合わせが、ユリーカとニャースなのであった。
 さらにさらに、ゴロンダから逃げるうちに、2人はツタが絡まって繋がれてしまう。

 ……これを見て、無印編第105話「ピカチュウVSニャース」を思いだした方も多いのではないだろうか。
 まぁそれもそのはずで、脚本はその時と同じ大橋さん。件の話が99年7月放送だったので、実に約16年ぶりのオマージュとなる。これだけ間が空いてれば“お決まり展開”とは言えないだろうし、小さい子には新鮮さ、ポケモン世代には懐かしさを味わえるという、良いことずくめのチョイスな訳だ。


 さて、2人のツタは解けない。

  ニャース 「こうなったらニャーが仲間の所に連れてってやるのニャ」
  ユリーカ 「そう言いつつ、アタシをロケット団のところへ連れて行って、デデンネをゲットするつもりでしょ」

 ……そりゃ疑いますわ。
 ニャースが信用ならないのは、第11話と56話で確認済み。いくら子供と言えど、それに引っ掛かるようなユリーカではない。
 なお、「ピカチュウVSニャース」でも、ニャースが同じ手口でピカチュウを連れて行こうとするが、即座に“10万ボルト”で拒否している(笑)

  ニャース 「そそそんなつもりはないニャ」
  ユリーカ 「そう顔に書いてあるもん」
  ニャース 「にゃにゃ……ニャーの顔には文字なんて書いてないのニャー!」
  ユリーカ 「この小判ホンモノ?」 < カキーン >

  ニャース 「勝手に小判にデコピンしないのニャ! ここは大切なのニャ」
  ユリーカ 「でもどうして小判があるの?」
  ニャース 「……ニャーも分からないのニャ」

 なんの躊躇いも無く小判にデコピンかますユリーカ、そして思ったことをそのまま尋ねる言動が、とても子供らしい。

 そして皆さんは知っているだろうか……ニャースが小判をどれだけ大切にしているのかを。

 無印編第46話にて、交通事故に巻き込まれて小判を無くしてしまったニャース、泣き叫んで絶望していたのであった。


  ユリーカ 「やっぱり不思議よね。どうしてニャースは喋れるの?」
  ニャース 「よくぞ聞いてくれたのニャ! それはそれは……長くて悲しいストーリーが隠されているのニャ……」
  ユリーカ 「だったらいい」
  ニャース 「聞いといてその態度はなんニャァ!?」

 ……うん。これはニャース、怒っていいと思う。そもそもこの件……どっかで見たことあるぞ。
 それは確か、第56話でも、ユリーカがニャースに喋れる理由を聞いていた。そして長いならいいと断っていた。
 まさかの2回目であり、実は第56話の脚本も、同じく大橋さんだったりする。自分の担当回に自分のネタを入れると言うのも、なかなか楽しそうだ。そして、二度あることは三度ある……と言うより、ニャースがきちんと説明できる日は訪れるのだろうか。


  ユリーカ 「あああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?!?」

 と、突然叫ぶユリーカ。
 占いアプリで見た“運勢最悪”というのは、このことだったと気付いたらしい。“ゴールドカラー”はニャースの小判。驚異の現実である。



 一方、別れた面子はまた、各々可愛らしい活躍を見せてくれた。


 シトロン、ピカチュウテールナーホルビーのグループは、久々にシトロンの発明がお出まし。

  シトロン 「生体を感知するレーダーロボット、名付けて“生き物見つけた君”です」(ドヤァ)

  ホルビー 「ほぉ……」
  ピカチュウ 「科学の力ってピカー!」


  テールナー 「嫌な予感しかしない……」


 しかし今回の発明は珍しく、本当に珍しく、爆発せずに機能した……のだが、生き物を見つけるだけでそれが誰だか分からないと言う欠陥品。
 そうこうしているうちにゴロンダが襲ってくる。


 そこで行動に出たのはテールナーだった。
 フォッコの頃はバトルに消極的だった彼女も、こうして積極的に行動するようになったのは、大きな成長だ。そしてそれは、セレナの成長にも繋がるだろう。



 そんなセレナは、ゲコガシラハリマロンと共に行動中。
 森を進んでいると、突然ゲコガシラの制止が入る。

  セレナ   「どうしたのゲコガシラ?」
  ゲコガシラ 「……安全だ。大丈夫やで」

 どうやらセレナたちを先導してくれるらしい。その姿と相まって、とても紳士的だ。

  セレナ  「ゲコガシラは私のボディーガードをしてくれてるのね。頼もしいわ〜」
  ハリマロン 「ワイだってできる男や!」

 と、ハリマロンもセレナの前を行く。

  セレナ  「ハリマロンも、ボディーガードをやってくれるの?」
  ハリマロン 「おぅ! ワイだって出来る男や!」

 しかしいざゴロンダと対面すると……。

 ダメだこりゃ。



 その頃、サトシはヤンチャムとともに高台に立っていた。
 そこならヒノヤコマが見つけてくれると、はなっから雑用を想定されたヒノヤコマには同情する。

 そして、ヒノヤコマに加え、ルチャブルレントラーと合流。

 サトシに飛びつくレントラーだが、そんなキャラだったっけか?

 そして早速サトシは、ヒノヤコマに再度、空から皆を探すよう指示。雑用スキルが光る。

 そんなヒノヤコマとは別行動で、サトシたちはセレナたちと合流した。
 ヒノヤコマもシトロンたちと合流したようで、これでユリーカを除き、全員が合流したことになる。

 どうでもいいが、セレナとヤンチャムテールナーの合流が、いちいち可愛い。


 
 で、当のユリーカはと言うと、相変わらずニャースと繋がれたまま、森を彷徨っていた。

  ニャース 「おなか空いたのニャ……」
  ユリーカ 「アタシも……」

 こんな危機的状況でもお腹が空くのが、アニポケの微笑ましいところ。
 で、ふと木の上を見ればナナの実が。普通ならオレンやモモンを出すところだが、ナナをチョイスしたところに拘りを感じる。確かに甘い木の実だけど。

 ニャースが“超”珍しく四足歩行で木の実をゲット。なんか人間に近付こうとするあまり四足歩行を忘れたとかなんとか言ってた気がするが、可愛いからいいとしよう。

 で、それを一人で食べてしまうニャース
 まぁニャースらしいと言えばニャースらしいが……、するとデデンネが、ユリーカのために木の実を取ってくれた。当然それを独り占めするユリーカ。なお、自由なデデンネは木の上で木の実をかじっていた。

 怒ったニャースは、もうここから動かんと座りこむ。そう言うのを逆ギレって言うんやで。
 そんなニャースに、良い意味で凄くゲスイ顔で“ほっぺすりすり”を指示するユリーカがまたなんとも。しかしツタで繋がれているもんだから、結局ユリーカも痺れてしまうことに……。こういう甘さが子供である。良い意味で。

  ニャース 「考えて見れば、揉めてる場合じゃないニャ……」
  ユリーカ 「そうよね……」

 そうしてユリーカは、ナナの実を3本に分け、ニャースデデンネに手渡した。そうか、この描写があるからナナの実を出したのか。
 たとえ敵同士でも、行動を共にする以上は仲良くしなければならないという考えを、ユリーカも持ち合わせていた訳だ。


 で、実はこの部分も「ピカチュウVSニャース」のオマージュだったりする。
 まだ木の実の概念が無かったのでリンゴなのだが、犬猿の仲とも取れるピカチュウニャースが一つの木の実を分け合って食べるシーンは、なかなか心温まるものがあった。
 その時のニャースが言った、「違う場所で、違う出会い方をしていれば、友達になれてたかもしれないニャ」。ロケット団ブイブイ言わせているニャースだが、根は優しいと実感できた瞬間だった。

 ……そう言えば、だから冒頭にリンゴが登場したのかな?


 その後、寝ているゴロンダに気付かれないよう忍び足で進んだら案の定転んで、走って逃げたら崖から落ちてタマゲタケの“キノコのほうし”をユリーカが浴びてしまって……。

 ここでニャースにも、ユリーカと協力しようとする姿勢が見られる。
 眠ってしまったユリーカを担いでカゴの実を探しに行こうと奮闘するが……。

 ダメだった。
 結局、デデンネがカゴの実を見つけ、その場を凌ぐ。

 再び歩き出した2人だが、川に落ちて流され岩のお陰でツタが切れたところで、一緒の行動は終了する。

 今日のニャースは猫っぽい(猫です)。

 ユリーカは割とあっさり別れたが、ニャースはどこか心残りな様子。

  ニャース 「ニャーも、超生意気な小娘とお別れできて嬉しいのニャ。でも……」

 その時、森に轟くゴロンダの雄叫び。

  ニャース 「こうなったら乗りかかった船ニャ。オミャーらを無事にジャリボーイたちの元へ届けるニャ」(ゴロンダに見つかったらこいつらを囮に逃げるニャ!)

 ……おい。しんみり展開を予想したオレの期待を返せ。
 そしてユリーカのその顔はなんだ。


 ……とまぁ、色々あったが、ユリーカは無事にサトシたちと合流。ゴロンダに見つかることはなかったようだ。

 しかしこのタイミングで現れるゴロンダたち。
 こりゃバトル展開かと思ったが、ヤンチャムゴロンダの前に立ちはだかる。

 どうやら襲って来た理由を尋ねているようだ。
 同じ種族同士とは言え、明らかに攻撃態勢のゴロンダ3匹に立ち向かえるヤンチャムは、相当肝が据わっている。持ち前の正義感なのか、セレナを守りたかったのか……だとしたらハリマロン完敗である。

  ユリーカ 「ほら翻訳機!」
  ニャース 「分かったから押すニャ!」

 翻訳機によると、どうやら食べ物の問題らしい。
 森の中に、沢山の果物が実る木があって、ゴロンダたちは、毎年それを分け合っていたらしい……のだが、それを何者かが奪って行ったんだとか。

  セレナ 「それって……」
  サトシ 「まさかおまえ……」
  ユリーカ 「ホントあんたたちって……」
  ニャース 「知らなかったのニャ」


 うん、なんとなく予想できてた。

  セレナ 「じゃあ私も知ーらない」
  サトシ 「素直に謝った方がいいんじゃないか?」

 ここで謝るように促すサトシは流石である。

 で、さきほどサトシたちがリンゴを持っていたので、サトシたちが奪ったのだと思ったらしい。

  セレナ 「私たちは、果物を拾っただけなの。犯人は“ロケット団”って人たちよ」

 セレナ何の躊躇いも無く ぶっちゃけた!

  ニャース  「ジャリガール裏切ったニャ!?」
  ゴロンダ 「なんだ兄ちゃん、ロケット団を知ってるんか?」
  ニャース  「なんだろうニャ〜ニャーには分からないニャ〜」


 からの……

  ムサシ  「ニャース! こんなところに居たの〜!」
  コジロウ 「ゴロンダまでいるぞ」


  ニャース 「なんでいま来るニャ……」


 からの……

  ムサシ  「なんでいまくるニャーと聞かれたら……」
  コジロウ 「答えてあげるが世の情け……」
   ・
   ・
   ・
  ムサシ  「銀河を駆けるロケット団の2人には……」
  コジロウ 「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」
  ニャース 「ニャ〜んてニャ!」


 からの……

  ムサシ  「なぁんで名乗っただけで吹っ飛ばされるのぉぉぉぉぉ」
  ニャース 「詳しい事情は後でニャぁぁぁぁぁぁ」
  コジロウ 「嫌な感じぃぃぃぃぃ」


 もう完璧すぎるこの流れ。
 前回前々回と悪役っぽいことをしたためか、体を張って笑いを取りに来た。……それでこそロケット団だ!


 勘違いと分かったゴロンダたちは、サトシたちにリンゴを分け与えてくれた。
 問答無用で襲い来るスピアーとは違う、大人の対応を見せたゴロンダ。第11話の時もそうだが、見た目で悪役っぽいものの、どこか憎めない存在である。


 ゴロンダたちに別れを告げ、クノエに向けて出発するサトシたち。

  セレナ 「ニャースとツルで繋がっていたなんて、占い通り、今年一番最悪の運勢だったのね」
  ユリーカ 「そうでもなかったよ。最悪だったけど、楽しかった。ね、デデンネっ」

 ニャースはアレだったが、ユリーカは内心、ニャースとの行動を楽しんでいたようだ。小判にデコピンしたり一緒に木の実を食べたりと、確かに楽しむ要素があったと見れる。
 もはや驚くことでもなくなってきたが、ポケモンと会話できるというのは、たとえ敵であったとしても、新鮮なことなのだろう。
 根は優しい(であろう)ニャースとの行動は、ユリーカにとって、充実の時間だったようだ。


● 総括
 本当に久しぶりの、重要回でもなければ伏線回でもなく、特殊キャラの登場も無い、完璧な日常回。
 ユリーカとニャースの触れ合いを軸に、笑いあり微笑ましさありで息抜きにピッタリ。しかしやはり、自身の話をオマージュした、言わば大橋さんの“作戦勝ち”的な脚本には頭が下がる。面白さと懐かしさを兼ね備えた、万人受けするであろうストーリーだった。
 XY編は次回予告にも注目だ。BGM無し予告はニャスパー回以来だが……、果たしてどの程度の“ホラー”になるのだろうか。