ポケモンXY感想−85話目

 第85話 「折れた小枝 ・ 折れた心! テールナーの強き思い!!」


 事の発端は、


 ポカロンの特訓中、


 ヤンチャムが放った“ストーンエッジ”で、


 テールナーの枝が折れた。

  テールナー 「てなあああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 これは……、前回のポカロンから考えるに、テールナーが“ストーンエッジ”に乗るタイミングが ずれたのか。練習中の事故ではあるが、単なる事故では片付けられないほど、テールナーにとってはショックだったらしい。

  テールナー 「てぇぇなぁぁ……」
  ヤンチャム 「ちゃむちゃむ……」
  テールナー 「てぇぇなてなっ!」
  ヤンチャム 「やんちゃぁ……」

 反省している様子のヤンチャムテールナーは泣きそうな表情からの怒り。慌ててセレナが2匹を制止する。
 その直後、サトシたちに折れた枝を見せた時のテールナーの鳴き声が非常に可愛かった。

 悲しむテールナーに責任を感じたヤンチャムは、森の中へ走り出す。そして。

  ヤンチャム 「やんちゃぁ」

  セレナ  「ヤンチャム、探してきてくれたの?」
  テールナー 「てななのぉ」 プイッ

 ……ねぇ、テールナーいま“ダメなの”って言ったよね。絶対“ダメなの”って言ったよね。

 ならばと、みんなでテールナーが気に入る枝を探しに行こうとサトシが提案。
 ヤンチャムの行動に感化されたのだろうが、テールナーを元気づけるため、自分のポケモンのように接するサトシは、やはり主人公らしい。

 各々森に入って枝を探す。
 ピカチュウが枝を咥えているシーンが可愛かったのはさておき、ヤンチャムはどこか納得できない様子で、先ほどの枝を握りしめていた。
 そしてシトロンはケツを見せるな。


 合計20本ほどの枝が集まり、テールナーは吟味する。
 もっとも、ユリーカやデデンネが選んだと思われる枝は、小さすぎて候補から外れたようだが。

  テールナー 「てぇな……てぇなぁ……」

  テールナー 「てぇななぁのぉ!」 ブンブン

 ……ねぇ、テールナーいま“これじゃないの!”って言ったよね。絶対“これじゃないの!”って言ったよね。

 納得のいく枝が見つからず、とうとうテールナーは飛び出してしまった。
 この辺はとても女の子らしいが、飛び出すほどまでの理由をテールナーが抱えていることに、セレナは、そしてサトシたちは気付いていなかった。

 1人の例外を除いて……。


  コジロウ 「まったくもぉ!」
  ニャース  「なに怒ってるのニャ?」
  コジロウ 「だってそうだろ! みんな何故テールナーの気持ちを分かっあげないんだ……」

 それは、茂みの中で様子を伺っていた、コジロウだった。

  コジロウ 「テールナーにとって、あの枝に代わるものなんてあるはずないのに!」
  ムサシ  「あーら。コジロウにはテールナーの気持ちが分かるってーの?」
  コジロウ 「勿論! モノに拘るマニア心に、人もポケモンも違いは無い! お前たちもあるだろ? 小さい頃の、そんな想いが……」



 〜 回 想 〜

 コジロウの王冠コレクション生きてたああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 けど捨てられてたあああああぁぁぁぁぁ!?
 とりあえず、超久しぶりにコジロウのママンが声だけだが登場したことに驚きである。


  コジロウ 「オレにとって……あの王冠1つ1つにドラマがあったんだよぉ……うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
  ムサシ  「マニア心は深すぎて分からないわ」
  ニャース  「まったくだニャ」

  コジロウ 「マニア心が分かる者同士、放っておく訳にはいかない! いよしっ! オレに任せろっ!」

 その昔……、コジロウはニャースを助けるために、大切な王冠コレクションを犠牲にしたことがあってだな……。
 とにもかくにも、コジロウの王冠コレクション設定が再度見れたことで、個人的にテンション上昇。

 そして、敵ながらテールナーの気持ちを想うコジロウには好印象。昔からそうなんですよ、コジロウって。育ちが良い分、本当に良い奴なんですよ、コジロウって。
 たとえシリアス回があったとしても、これだからコジロウは憎めないんだ!



  セレナ  「テールナー……」
  ヤンチャム 「やっちゃぁ!」
  テールナー 「てんなぁ……!」

 テールナーの後を追ったセレナとヤンチャムだが……、テールナー、見るからに凄い怒ってる。
 これほどまでに怒りを顔に出したこと、今まで(進化してから)あっただろうか。でも可愛い。

  セレナ  「他のじゃダメなのは……なんで?」
  テールナー 「なっ……てんななっ!」
  セレナ  「テールナー……?」
  テールナー 「なぁぁぁっ!」
  セレナ  「あっ……ちょっと! テールナー!?」

 セレナの言葉を聞いて、テールナーは再び、飛び出してしまった。
 まるで、他の枝ではダメな理由を悟らないセレナを、失望したかのように。


 慌ててテールナーを追いかけたセレナが目にしたのは、テールナーを宥めている、1人の青年だった。


  コジロウ 「私は……コダワリと申します」

 普通にイケメンである。

  コジロウ 「ふむ……それは?」
  セレナ  「テールナーの、大事な枝が折れちゃって……」
  テールナー 「てってぇなぁ……」
  セレナ  「なかなか、代わりのものが見つからないんです」
  コジロウ 「モノに拘るのには、深い理由があるのです」
  セレナ  「深い理由ですか……」


 そこでセレナはハッとする。

 以前(アニメ内では語られていなかった部分で)、テールナーとポカロンの特訓をした時のことを。
 上手くできた炎の演技を共に喜び、その時の枝を一緒に手に取り、“この枝から繰り出すワザで、カロスクイーンに絶対になろう”と誓い合ったことを。
 そして、その約束がるからこそ、他の枝ではダメだと言うことを。

 テールナー、良い子や……。
 思えばフォッコの頃から、セレナ大好きなテールナー。そんな彼女と交わした約束を枝に託し、これまで大切に使っていた……。なんともホッコリする話しだ。あとコクンと頷くテールナー可愛い。

  セレナ  「この枝を直せないか、ポケモンセンターで相談してみましょう」
  ヤンチャム 「やぁんちゃぁ!」
  テールナー 「てぇなぁ……」

  コジロウ 「(やっと分かってくれたようだな……)」

 コジロウが変わらずイケメンである。
 なにがイケメンかって、セレナへの助言を、必要最低限しか与えていないと言うことだ。
 彼が言ったのは、「モノに拘るのには、深い理由があるのです」――ただそれだけ。「思いだしてみろ」であったり、「テールナーの気持ちを考えろ」のような、セレナに考えを強要していない。あくまで、セレナが自発的に思いだすように仕向けているのだ。
 これが大人の対応、と言ったところだろう。たとえ敵であっても、こういった面で子供(セレナ)に的確なアドバイスを与えられるコジロウは、やはり人間が出来ていると感じずにはいられない。


 さて、当然だが、ポケモンセンターで折れた枝を直すなんて不可能である。
 しかしジョーイは、メブキジカの折れた角を修復したと言う木の名医、甚五郎を紹介してくれた。
 角を修復できるのなら、テールナーの枝も修復できるに違いない。そう信じるコジロウとセレナ。そして嬉しそうなテールナー可愛い。一行は期待に胸を膨らませ、甚五郎の居るウッドホスピタルへと向かった。

 それよかこの辺、コジロウ完全にセレナの保護者である。


 ウッドホスピタルに到着し、甚五郎とエルレイドに交渉するセレナたち。

 ここでもコジロウが抜群の保護者っぷりを見せてくれる。甚五郎が難色を示しても、メブキジカの事例を挙げ、引き下がらない。
 本当にいつも思うが、コジロウに悪役は勿体ない。いや、こんな優しさがあるからこそ、悪役とのギャップに惹かれるのだろうか。


 甚五郎が言うには、あの時はメブキジカの強い想いがあったから成功したのだと。
 しかし、枝を直したいと言うセレナの、そしてテールナーの想いは変わらない。それこそ、山よりも高く海よりも深し。誰の言葉かは忘れた。

 なら甚五郎は、その想いを見せろと言う。
 ……これ絶対バトルだ。絶対バトルで想いを見せろって言うパターンだ。

  コジロウ 「でも、どうやれば……?」

 コジロウの疑問も当然だ。心に秘める想いを形として定量化するなんぞ、不可能に決まってる。
 ……だからこそ、絶対にバトルで見せろって言うに決まってる。もうバトルする未来しか見えない。

  甚五郎 「お嬢ちゃんのテールナーと、ワシのエルレイドでバトルするのはどうじゃろう。ポケモンの想いを知るには、ポケモンバトルが一番じゃ」
  エルレイド 「えっる!」

 まぁ当然の流れである。

 
 サトシたちも、遅れてウッドホスピタルに駆けつけた。
 そして、サトシたちが見ている前で、セレナがバトルをすることに。

 ……あれ? 85話目にしてセレナ単独でのVS演出って初めてじゃね?


 ※ ただし第37話の裏セレナは除く。
 

 始まるバトル。
 テールナーは“ひかっく”でエルレイドを攻めるが、動きを読まれ、回避されてしまう。枝が無いことで、炎ワザが使えないらしい。映画では普通に口から火を吹いてたけど。
 罪悪感で居た堪れないようなヤンチャム可愛い。そんな様子を見たサトシは、心配させまいとヤンチャムをに大丈夫と言い聞かせる。そしてセレナの応援に。やはりサトシは主人公である。

 しかし、やはり攻撃が読まれている。見よ、この獲物を狩らんとするエルレイドの目つき。
 エルレイドはテールナーの背後を取り、“きりさく”を繰り出す。“ひっかく”の上位互換的なワザだが、ある意味、セレナとテールナーの未熟さ、力の差を感じた。


 一方、ムサシとニャースはサトシたちの背後を取っていた。

 ニャースが猫っぽい!

 で、テールナーが“サイコカッター”を上手く回避したところで、ピカチュウに向けて捕獲ネットが放たれた。外れたけど。

  サトシ 「何なんだ!?」

  ムサシ 「何なんだ、と言われたら!」

  ・ ・ ・

 ここでコジロウ、つられて口上に参加するかと思いきや、空気を読めないムサシとニャースに呆れ顔。
 これだけ見ても、コジロウがどれだけテールナーのことを心配しているかが読み取れる。


  ムサシ  「(ったくコジロウ、いい加減に目を覚まして!)」
  コジロウ 「(……仕方ない!)」

 しかし結局、ロケット団のコジロウとして、変装を解くのであった。
 これ特にユリーカの目線的に明らかにバレてるけど、上手いことコダワリ=コジロウとバレなかったようだ。無理がある気がするが。
 

  ムサシ  「とぅ!」
  コジロウ 「ふんっ……とぅ!」
  ニャース  「すたっ!」
  ムサシ  「もとい! 何なんだと聞かれたら!」
  コジロウ 「答えてあげるが世の情け!」

 リズムと合った、流れるような口上の再突入。地味に気に入った。


 さて、ムサシはピカチュウを奪おうとするが、コジロウは最後まで乗り気でなかった様子。
 そんなムサシに対抗したのは、この場の主役、セレナだった。

  セレナ 「あんたたちの相手をしてる暇は無いの! サトシ、手伝って!」
  サトシ 「おう!」

 セレナが前に出た時のサトシの表情は、どこか呆気に取られたようなものだった。元からバトルが得意でないセレナが、進んで自ら対抗しようとしたのだから。
 しかしすぐさま、バトル態勢に入る。サトシもセレナを見直したのかもしれない。

 ヤンチャムの“ストーンエッジ”を利用し、テールナーロケット団の上を取った。序盤の演技の練習が、図らずともここで成功したことになる。
 そして繰り出したワザは……。

 大の字に炎が広がる、“だいもんじ”。
 決して“大”→“中”→“小”と衰えることが無い、高威力のものだった(このネタを知っている方はもう少ないかな?)。

 しかし、高威力の代償は大きかった。

 木端微塵に砕け散るテールナーの枝。こうなると、もはや修復は不可能に近い……。

 ラストは普段通り、ピカチュウの“10万ボルト”でロケット団を蹴散らした。

  コジロウ 「見事な新ワザだぁぁテールナー! そのやる気を買って、枝を直して下さーい甚五郎さーん!」

 今回コジロウ悪い事なんもしてないぞ!
 自分がコダワリであることを告げることなく、最後の最後まで良い人を貫いたコジロウ。たとえセレナたちに気付かれなくても、君の優しさは、私たちがしっかりと評価するで。



 木端微塵の枝を見て、テールナーは悟っていた。

 バトルの再開を要求するセレナだが、甚五郎は、最初から修復不可能だったと言い放つ。

  セレナ   「そんなっ……」
  甚五郎 「テールナー。君は、もう分かってるね。何故ワシがバトルさせたか」
  テールナー  「………」
  甚五郎 「いいかい。道具を大切にする気持ちはとても大切だが、何事も、あまり拘りすぎることは、あまり良くない」
  テールナー  「てぇ……」
  甚五郎 「折れた枝で、“かえんほうしゃ”を打とうとし、“だいもんじ”になった。偶然とは言え、強い想いがあったからこそ、あの枝で出せた。今見せてくれたような強い想いがあるのなら、きっと、どんな道具でも使いこなせるはずじゃ」
  テールナー 「てぇな……」

 弱々しいテールナーすっごい可愛い。
 そんな彼女の脇で、ハッとしたように、ヤンチャムが行動に出た。


  ヤンチャム 「やんちゃやんちゃ……やんちゃ!」


 ねぇ待って。それどうやって持ってたの?

  セレナ  「テールナー。折れてしまった枝で約束した、カロスクイーンには なれなかったけど、次は、ヤンチャムがくれた この枝に誓いましょう。……私たちは、次のステップに行かなきゃ!」
  テールナー 「てんなぁ」

  セレナ  「私たちは……カロスクイーンになるの!」
  ヤンチャム 「やんちゃぁ!」
  テールナー 「てぇなっ!」

 新たな枝に、新たな誓いを託したセレナたち。
 コジロウの言っていた“こだわり”は叶わない結果となってしまったが、それは、彼女たちを大きく成長させたのだ。
 アニメ的ご都合主義でない、別の結果。ケロマツの“かげぶんしん”取得時のように、新たな答えを見つけ出すXY編は、本当に好感が持てる。

 新たな枝に、セレナはリボンを結んだ。
 これが、彼女たちの誓い。夢を追い求める、彼女たちの絆のカタチだ。


 これでもう、テールナーは大丈夫だろう。
 新たな枝で誓い合ったそのカタチを、いざ、バトルにぶつけようではないか。

  セレナ  「テールナー……“だいもんじ”!」
  テールナー 「てぇぇぇなぁぁぁぁぁっ!」

 見事な“だいもんじ”。
 やはり先ほどのは“まぐれ”ではなく、テールナーの強き想いが生み出した、新ワザだった。炎タイプ強力ワザを生み出すほど、テールナーの想いは本物だったのだ。

  エルレイド 「える……」 (強力な“だいもんじ”……見事だ)


  エルレイド 「ぅえぇぇっる……!」 (空気読んで倒れとこ)
  甚五郎 「そこまでじゃ!」


 エルレイドが気絶目にならない当たり、割と空気を読んでいたのかもしれない……。


 甚五郎は最後に、木端微塵の枝を(形だけ)修復し、それを土に植えた。

  甚五郎 「この枝は、ここで新しい人生を過ごすことになる。やがて大きくなり、また人の役に立つ日が来る」
  エルレイド 「えるれぇっ!」

  セレナ  「絶対カロスクイーンになって、みんなで報告しに来ようね」
  テールナー 「てなっ!」
  ヤンチャム 「やんちゃぁ!」
  セレナ  「あなたとの誓いは、ちゃんと受け継いだから……!」

 こういう纏め方に入るとは、予想していなかった。
 古い枝は用無しでは無く、形として残す――。それは、その枝に誓ったテールナーの想いを大切にすることだし、テールナーの気持ちを尊重するものでもある。とても上手い纏め方だ。

 新たなる誓いを胸に、セレナたちは歩き出す。
 大切なことを学び、大きく成長したセレナたち。彼女たちのカロスクイーンへの道を、引き続き、応援していきたい次第である。


 ……ところで、コジロウの通常変装をコダワリと名乗ってしまい、今後大丈夫なのだろうか。
 下手するとセレナとコダワリが再会することになり兼ねないが……。


● 総括
 所々ツッコミどころはあったが、話の良さを考えれば帳消し以上。セレナ回として、キャラたちの内面を描くストーリーとして、十分楽しめる内容だった。
 折れた小枝はもう直せないと言う点などは、いわゆる“ご都合展開”に非ず、現実的なストーリーを描くXY編ならではと言った所か。
 しかしポケモン世代の人間にとって注目すべきところは、当然コジロウに行くわけで……、王冠コレクション登場バンザイ!


● 次回ひとこと予告
 → ファイヤー登場だが、コジロウのファイヤーコスプレを知っている方はどれくらい居るのだろうか。