ポケモンXYZ感想−115話目 【 更新済み 】

 第115話(Z-22) 「セレナ、サトシになる! 最強ピカチュウ対決!!」


 今回は、DP編までアニポケ脚本を担当していた、松井亜弥さんの復帰回。

 彼女の代表脚本として「ヒコザルの涙」が有名だが、個人的にはAG編「脱出サメハダーの島」と、DP編「原点回帰だロケット団」を挙げたい。前者は1話中でハルカの水着を2種類出し、うち片方を着たままに破くと言う強烈な演出、後者はDP編にして初代の名乗り口上を復活させたことで、個人的に印象に残っている。

 そんな彼女が描く、XYZ編初脚本。
 事前情報から、“踏み込んだサトセレ描写”、“ギャグテイスト”ということは分かっていたが、まぁ何と言うか、完全なセレナの魅力回であった(笑)



 ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ―――


 夜、テントを張って高原野宿。

 サトシはピカチュウゲッコウガによる模擬バトル特訓中。……川の中で。
 ピカチュウの“エレキボール”を、“みずしゅりけん”で両断するゲッコウガ。久々に描かれる特訓風景は熱い。ただ、“エレキボール”川に落ちたら感電する恐れが……。

 そうして水飛沫をモロに被るサトシだが、ここですかさずセレナがタオルを投げた。

  セレナ 「もぉ〜。ほらっ、そのままじゃ風邪引いちゃうよ!」

 投げる姿可愛い。って言うか健気。
 本当にサトシのことを想ってるんだなとうかがえたし、なんとなく、女性脚本家らしい表現にも思える。

 タオルを受け取るサトシは大丈夫だと言うが……。



 ところ変わって、こちらはロケット団アジト。サカキ様お久しぶりです。
 サカキに活動報告するムサコジだが、サカキが褒めたのはニャースのみ。

 あぁこれ夢だなと思ったらやっぱり夢だった。

  ムサシ  「いつまで寝てんの? 早くピカチュウゲットしに行くわよ」
  コジロウ 「も〜。お寝坊さんだなぁ」

 この辺の会話を取っても女性らしい言葉選び。


 そんな中、よく分からない奴が登場した。

  ジミー  「教えてくれぇ! その強いピカチュウとは、オレのピカチュウより、強いのかぁぁぁぁぁ」
  ジバニャン 「ぴぃかぴかぴかぴかぴかぴかぴかぴかぁ」

 ……よく分からない奴が登場した。

 どうやらジミーは、ピカチュウを愛するあまり、バトルでピカチュウ以外は一切使わないらしい。で、旅をしながら強いピカチュウの噂を聞いてはバトルを挑み、自分が最強のピカチュウ使いであると認めさせてるんだとか。迷惑極まりない。



 ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ―――



 一方いつものメンバーは、いつものように朝食中。
 何気に前回の料理マシーンが活躍中。シトロンそろそろ手料理に疲れたか。

 ただ違うのは、サトシが居ないということ。
 まだ寝ているのか、ユリーカが起こしに行くと……。

 起きた。

 しかし、どこか変だ。
 ユリーカの言葉をオウム返しし、ふらふらと前進すると……。


  セレナ 「ふぁっ……えぇぇぇっ……!?」


  サトシ 「いまっ……だっ……」


  セレナ 「サトシっ!?」


  サトシ 「ぁっ……」


  セレナ 「ぁ……?」


  サトシ 「あいっ……」


  セレナ 「ふぇぇぇぇっ……!?」


  サトシ 「……アイアンテールだ、ピカチュウ...」


 どうしたアニポケ!? そしてセレナ可愛い!

 最早セレナとしてはシチュエーション的にサトシに告白されると勘違いしてもおかしくない状況。憧れのサトシの方から抱き付かれたのだから、平常心で居られる訳が無い。
 “愛してる”とでも言われると思ったのだろうか。そしてそれを“アイアンテール”に落ち着かせる発想は、素直に凄いと思った。
 サトシに恋するセレナを魅せる、松井さんならではの描写といったところか。何にせよ、過去最大にサトシとセレナが接近した瞬間であった(笑)


 で、サトシは熱があるようだ。
 やはり昨夜のバトルで濡れたのが原因か……いや、サトシがその程度で風邪をひくのも疑問だが。

 そもそも、風邪に限らず、サトシが体調を崩したことは、19年続くアニポケの中で、数えるほどしかない。

 ・ ラフレシアの痺れ粉を吸い込んだ時
 ・ ポケモン漢方だかでの腹痛
 ・ フシデの毒

 パッと思いつく限りこの辺りか。
 で、ポケモンのワザに起因しないものは、はるか昔の腹痛くらい。それほどサトシは健康体なのだ。


 セレナがサトシの額に乗せるハンカチは、ハリボーグ回のアレ。ネタが細かい。
 熱が相当高いらしく、濡れハンカチでは限界があるようだ。
 ピカチュウも心配そうに見守り、ユリーカの「ピカチュウも心配よね」の問いかけに無言で頷く仕草は、グッとくる可愛さがあった。

 そこで、シトロンとユリーカは、街に薬を買いに出掛けた。
 ……流石に風邪を治すメカは持っていない or 作れないか。



 ▲ 密室にしておきますね。


 セレナはサトシの看病に残るが、ここで赤面するようなセレナではない。
 本当にサトシのことを心配しているようで、“私がしっかりしなきゃ”と心の中で誓う。
 テールナーヤンチャムニンフィアにも協力して貰い、サトシの看病に当たった。ここでニンフィアの作画ミスを犯したのは大きなマイナスポイントである。


 ▲ 足の造形と色がおかしい。



 そんな彼女たちの看病あって、サトシの熱も下がってきているようだ。
 このまま安静に寝かせ、シトロンたちの薬が届けば、サトシも回復するだろう――、そんな矢先に響き渡る、エレキギターの騒音。
 
  ジミー   「オレは流離のギタリスト、またの名をピカチュウ使いのジミー! そのピカチュウもしや! マサラタウンのサトシのピカチュウかぁ!? めっちゃ強いと評判のぉぉぉ!?」
  セレナ    「そうですけど……」
  ジミー   「いっぇぇぇぇぇぇい! こんなに早く会えるとは流石オレ! 運が良いぜぇぇぇぇ!」
  ジバニャン 「ぴぃかぴかぁぁぁ!」

 セレナたちドン引きである。

 ドン引きされながらも、ジミーはギターの大音響とともに律儀に自己紹介。
 この時の背景が、昔懐かしいタイプのピカチュウ2種類が使われているあたり、何か拘りがあるのだろうか。


 ジバニャンことピカチュウのトンガリもノリノリでピカピカピカピカ叫んでいたが、そのうちバテた。


 こうも煩いジミーに対し、セレナは静かにするよう申し出るが、聞く耳を持たない様子。
 仕方なく、サトシを呼んでくるとジミーに伝え、セレナはテントの中にひとまず避難した。そうでも言わなければ、この騒音が止まらないと思ったのだろう。


 ……しかし。

 サトシ、顔色は良くなったものの、とてもバトルを出来る様子では無い。寝言でもバトルしているサトシに、ジミーの挑戦を伝えてしまえば、無理してでも受けることは明らかだ。
 けれど、かと言ってバトルを断ってしまえば、ジミーが納得しないのではと言う懸念もあるが、それはサトシのバトル経歴に傷を付けることになり兼ねない。
 サトシに憧れ、サトシの性格を理解しているセレナだからこそ、その辺は苦慮するところだ。

 今この場をどう乗り切るか、対応できるのはセレナしかいない。
 ここで対応を間違えれば、ジミーの性格を見るに、ややこしいことになってしまう――。セレナの対応には、それ相応の責任が生じることになる。

 で、そんなプレッシャーからか、行きついた先は、おかしなことになっていた。



  セレナ 「待たせたな! オレがマサラタウンのサトシだ!」

  ピカチュウ 「………」
  テールナー  「………」
  ヤンチャム  「………」
  ニンフィア  「………」


 ……うん。

 似合うって言えば似合うよ。けどその対応は おかしい!
 おかしいが、それだけセレナが切羽詰っていたと言うことか。サトシのために、(ある意味)危険を冒しているのだから。


 ここで気になってくるのは、セレナが“何処で”着替えたか。一部で静かな話題にもなっている。
 サトシの服を手に取ったのはテントの中。そこから外に出るとジミーにバレる恐れがあるから、当然セレナは、テントの中で着替えたことになる。それ即ち、寝ているサトシの目の前で。
 緊急事態とは言え、好きな異性の前で着替えるなんて、相当に恥ずかしい行為のはず。たとえサトシが寝ていたとしても、不意に起きる可能性だってある……。

 その辺のセレナの心情を妄想するのもまた一趣だが、そのような方には残念なお知らせがある。
 まず黒のインナーだが、これはサトシのものではなく、元々セレナが着ていたものだと思われる。色が同じなのだから、わざわざ着替える必要ない。
 次にズボンだが、セレナはスカート。スカートを脱いで……とはいかず、スカートを“穿いたまま”ズボンを穿き、その後、スカートを脱ぐのが普通だろう。何せ、♂のピカチュウヤンチャムも居たのだから。

 そんな訳で、セレナにしてみれば、さほど恥じらいなくサトシの服装に着替えたと推測される。
 サトシの代わりにバトルすると言うプレッシャーもあったはずなので、恥じらいなんぞ、最初から問題では無かったのかもしれない……。



  セレナ 「(よかった、とりあえず信じてるみたい。落ち着いてセレナ。サトシのために頑張るのよ!)」

 そんな変装にバレてないことが奇跡だが、ここまで来たら、本当にサトシを演じ切るしかない。
 サトシのことを想っての行動だが、逆にバレてしまったら厄介なことになるし、彼女の本気度を感じる。



 ▲ 胸の膨らみもある。


 ピカチュウの後押しもあり、セレナVSジミーのバトルがスタートした。

 “でんこうせっか”同士の衝突の後、トンガリが繰り出したのは“かみなりパンチ”。ピカチュウで“かみなりパンチ”は珍しい気もするし、なんとなく、マチスライチュウを思いだした。
 それを避けたピカチュウだが、次のトンガリのワザは“あなをほる”。尻尾をドリルのように回転させながら地中に潜るトンガリに、セレナは焦る。
 サトシのピカチュウが普段使わないワザを目の当たりにして、バトル経験の乏しいセレナでは、即座の反応が出来ないからだ。

  セレナ 「(次は、どこから来る……? サトシなら、このピンチをどう切り抜ける……!?)」


 そんなセレナだが、ピカチュウの呼びかけに、ハッとする。

  セレナ 「(そうよ。今までのサトシのバトル、誰よりも近くで見てたじゃない!)」

 それは、自分が一番サトシのことを想っていると言う、一種の自信なのかもしれない。
 サトシのミアレジム戦でのことを、セレナは思いだした。そして、指示を出した。

  セレナ 「ピカチュウ、“アイアンテール”だ!」

 ピカチュウは“アイアンテール”を、地面に叩きつけた。その衝撃は地中に伝わり、穴を掘っていたピカチュウは、地上に押し戻される。
 これは、正しくサトシがミアレジムで使っていた戦法。それをセレナが覚えていたからこそ、こうした咄嗟の指示が出来た訳だ。

  ジミー 「そんな手が!?」
  セレナ  「ピカチュウ、もう1度“アイアンテール”!」

 その隙を付き、ピカチュウはトンガリに“アイアンテール”を叩きこむ。

 声優的に、ジバニャンを しばくピカチュウ
 勢いよく地面に衝突したトンガリだが、まだまだ体力は残っているようで立ち上がる。

  ジミー 「これだ……、これを求めてたんだ!」

 その奇抜とも言えるセレナの(サトシの)戦法に、思わず熱くなるジミー。最強のピカチュウ使いを名乗るだけあって、強いピカチュウとバトルできることに、喜びにも似た感覚を覚えたのだろう。
 
  セレナ 「まだまだ! マサラタウンのサトシの力は、こんなもんじゃないぜ! (良かった……上手く行った……!)」

 当のセレナは、この戦法の成功自体が賭けだった様子。
 口では威勢よくサトシを演じていながら、内心ビクビクなのは可愛げがある。

 ともあれ、ジミーと互角に渡り合えているセレナにも、自信がついてきたようだ。

  セレナ 「かかってこぉい!」


 サトシとして全力で戦う、そんな気持ちが現れる表情と発言だが、このタイミングで、薬を買いに行っていたシトロンとユリーカが戻って来た。

  ユリーカ 「セレナー! どうしてサトシの格好を……」
  セレナ  「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

  ユリーカ 「……どうしてサトシのかkk」
  セレナ  「だぁぁっぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
  ピカ  「ぴかっちゅぴかぴかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 大絶叫。
 そりゃぁ、ここで正体がバレルのは避けたい……。

  ジミー 「ん? 仲間か?」
  セレナ  「ぁっ……うん。……ぁっ、ちがっ……仲間だ!」

 一瞬女の子に戻るセレナ。言い方も、仕草も。
 これまで上手いことサトシを演じてきたが、やはり想定外のことへの対応は難しいようだ。


 とりあえずコソコソと事情を話すセレナ。
 シトロンとユリーカは察したようだが、セレナにとって、サトシの服を着て、ノリノリでバトルしている所を見られたのは、かなり恥ずかしいことだと思う。
 見よ、このユリーカの眼差しを!

  ユリーカ 「(着たかっただけだよね……)」

 とでも言いたげである。
 何せ、ユリーカはセレナのサトシへの好意に気付いている訳で。だからこそ、テントへ向かう直前……。

  ユリーカ 「サトシぃ、頑張って」
  セレナ  「ふぇぇっ!?」

 遊ばれてます、セレナ。
 セレナの方も、今のユリーカで どっと恥ずかしさが込み上げてきたのだろうか、顔真っ赤。

 しかし、すぐさまセレナはバトルの再開を申し出る。
 このバトル、サトシに代わって勝利を掴まんとする、彼女の決意が感じられた。



 一方テントでは、シトロンがサトシに薬を飲ませた。
 顔色もだいぶ良くなっているし、薬も飲んだ。あとは安静に寝ていれば、体力も回復するだろう。
 それはそうと、デデンネ&プニちゃん、そこに乗るな。



 そして外では、ピカチュウ同士の“10万ボルト”のぶつかり合いが。
 やはりパワーは互角。ならばスピード勝負か。
 セレナはピカチュウに“せんこうせっか”を指示。対するジミーも、トンガリに“でんこうせっか”を指示する。

 両者がぶつかり合う、まさにその時!

 森の中からマジックハンドっぽい何かが飛び出して来て、ピカチュウとトンガリを捕えたのだ。
 その直後、森を突き抜けて割り込むトラックが。

 デコトラ……までは行かないが、一番星みまがう、随分と日本チックなトラックが登場しました!
 荒波にコイキング……、トラック野郎的な何かを感じた。

 そんな突然の出来事に驚くセレナたちだが、トラックの天井が開き……。


 ……なんやねん!?

 お前ら誰やねん!? ……いや、だいたい想像つくけど、その原型を留めない衣装はなんやねん!?

  ムサシ 「なんだぁ〜かん〜だぁとぉぉぉ言われたぁらぁ〜」


  コジロウ 「こたえ〜て〜あげるぅぅぅがぁ、世のぉ情け〜」


 いやホントなんやねん!?
 そして長い! 書き起こすことが面倒なほど演歌風変則口上長いぞ今日は!


 ついでに、富士山、松の木、桜のバックボード。まさしくここは日本である。
 舞台が海外に移ったBW編以降、こういった明らかに日本チックな描写は久しぶりで、それこそ、これまで避けられてきたようにも思う。
 しかし、演歌と同時にそれは復活。DP編から外れていた松井脚本だからこそ、こうして堂々と日本的要素を入れ込めたのではないだろうか。


 ロケット団一行は、ジミーがサトシのピカチュウとバトルし、弱らせたところで横取りするつもりだったらしい。
 しかし、ジミーのトンガリが思ったより強く、一緒にゲットしたんだとか。

  ムサシ  「……あれ? ジャリボーイかと思ったらジャリガール?」
  コジロウ 「あっ、ホントだ。しかしなんでまた?」
  ニャース  「なんにゃぁ? コスプレでもしてるのにゃ?」

 いや、本物のサトシの服を着てる当たり、ある意味コスプレより踏み込んだことしてます。
 そしてそんなロケット団の発言に、ジミーも疑念を抱き始める。

 ……のだが、ロケット団は逃走を開始。
 疑念を抱いている場合では無い、ピカチュウを取り返さなければならない。

 今日の運転手はコジロウ。トラックは急発進して行くが、バックボード手を抜くな! めっちゃ安っぽいイラストになったぞ!


 逃げて行くトラックを追いかけるセレナとジミーだが、足で追いつく速度では無い。
 このまま逃げられると思った時、颯爽と現れてトラックを止めたのは……。

  サトシ 「オレだよ、ロケット団!」

 サトシだった。
 おいおい待ってくれよ、さっきまで風邪で寝込んでたじゃないか。

  シトロン 「まったくサトシらしいと言うか……。ふつう風邪は1日じゃ治らないですよ……」

 いや、実質半日くらいで治した訳で……。
 けれど、ここでこのシトロンの発言があったことで、風邪を早く治したことへの不自然さが解消された。
 何故って、“それはサトシだから”で片付いてしまうから。もはや我々は、サトシの超人っぷりを把握している。その心理につけ込んだ、高度な不自然さの解消だ(違)


  サトシ 「悪かったなセレナ。オレの代わりにバトルしてくれたんだろ?」
  セレナ 「ぁっ……」

 顔を見なくてもイケメンと分かる発言と仕草。これが主役と言うものである。

  ジミー 「どういうこと?」
  セレナ  「本当に、ごめんなさい。悪気は無かったの……!」

 セレナの“てへぺろ”初めて見た。それを申し訳なさそうにやっているのだから、あざと可愛い。


 ジミーへの謝罪もそこそこに、ピカチュウを助けることが最優先だ。
 セレナは帽子を脱ぐと、それをサトシに投げる。

 サトシが受け取り、寝間着だが、帽子を被る。
 帽子はある意味、サトシのトレードマーク、普段のサトシの復活だ。

  サトシ 「さぁ行くぜゲッコウガ!」

 “ここで帰っちゃうことも出来たんだけどね……”なんて言うムサシだが、律儀に待っていたのは偉い。
 パンプジンマーイーカが繰り出され、いつものロケット団とのバトルがスタートした。


 途中、サトシにセレナが加勢、その的確な援護に、思わずジミーは目を見張る。
 サトシに変装して騙されていたとは言え、ピカチュウの戦法は良かったし、そして今も、なかなかのバトルの腕前を持っている――。ジミーがセレナを認めつつあると言うことか。

 まぁとりあえずピカチュウを救出後、ダブル“10万ボルト”でロケット団を撃退。お疲れ様でした。



  ジミー 「ところでお前……」
  セレナ  「ぁっ……」
  ジミー 「オレを騙してたのは感心しないが、テールナーヤンチャムニンフィアとお前のコンビネーション、なかなか決まってたぜぇぇぇいぇぇぇぇぇぇっぃ!」
  セレナ  「ありがとう」

 何と言うか、厄介ごとにはならずに済んだようだ。

 ジミーはセレナの腕前を認めたようで、景気付けと言わんばかりにロックンロール!
 トンガリもノリノリでジミーと一緒に奇想天外な動きで踊り、思わずサトシたちも顔が綻ぶ。
 取っ付きにくそうなキャラであったが、こうして見ると、なかなか筋の通った奴だ。


 そして、今度こそジミーは、サトシ本人とバトルを交わす。
 ピカチュウとバトルする意味ではセレナでも同じだが、やはり本来のトレーナーと戦わなければ意味が無い。本来の実力を出し切る意味でも、そこは重要だ。
 そう考えるとピカチュウ、よくセレナの指示で互角に戦えたものだ。その辺は、セレナがサトシとピカチュウのバトルを近くで見てきた賜物だし、コルニの指示によるバトルを見ても、どれほどセレナが的確にバトル出来たかが分かる。


 ……で、いざバトルが始まろうとしたところで、サトシの腹の虫が。
 あぁ、やっぱりサトシはサトシらしい。これでこそサトシである。

 シトロンとユリーカが準備に取り掛かるなか、きっとセレナ、ジミーを待たせちゃ悪いと思ったのだろう。

  セレナ 「ジミーもどう? シトロンの料理、とっても美味しいんだからっ」

 可愛い。

 って言うより、効果音的にコレ狙ってきてますわ。ここまで公式に可愛いアピールするヒロイン、今まで居ただろうか。……いや居たわ。映画とかで普通に見れましたわ。
 どちらかと言うと、この辺のヒロインの魅力は、松井脚本だからこそ、と言えるかもしれない。


 それに対するジミーの反応 ↓


  ジミー 「ふっ。じゃあお言葉に甘えて」

 いやね、いくら良い声で言ったって、セレナに顔を染めてるようじゃ、別に格好良さとか無いからな?

 何はともあれ、こうしてまた1人、セレナの魅力に堕ちた男子が生まれたのだった――。


 ポケモンバトルがキッカケで出会い、生まれた友情は、星の数ほどあるだろう。
 サトシやジミー、ピカチュウを眺めながら、ふと、そんなことを考えるセレナであった。

  セレナ 「……ふふっ」

 納得の可愛さ。

 バトルがキッカケと言えど、今回は正に、セレナが導いた友情だろう。
 セレナがサトシに変装し、代わりにバトルを挑まなければ、こうして一緒にご飯を食べる関係にはなれなかったはずだ。

 サトシとジミー、同じピカチュウ使いのトレーナーの友情を、繋ぐことが出来た――。
 セレナにとって、それは何より嬉しい結果だろうし、セレナがサトシに“与えた”ものでもある。

 こうして成長していくセレナの姿を、今後も応援して行きたい次第だ。


● 総括
 松井脚本復帰回。DP編以来の脚本のためか、その当時の雰囲気を残す、最近のXYZ編とは一味違ったストーリー。
 セレナを可愛く魅せ、またロケット団のあのノリは、「脱出サメハダーの島」(ハルカの水着を魅せる)、「原点回帰だロケット団」(R団初代のノリ復刻)の脚本を担当した松井さんならでは。それでいて上手いことストーリーを纏めるもんだから好印象だ。
 担当ペースは分からないが、今後も彼女の脚本を楽しみにしたい。
 

● 次回ひとこと予告
 → サトシ死にそうな声だしてましたけど……。


● おまけ
 ニンフィア大きさ、正しいのはどれだ!?