ポケモンXY感想−62話目

第62話 「サイエンスの未来を守れ! 電気の迷宮!!」

 ミアレの荒野を進むサトシ達。
 相変わらず遅れ気味のシトロンを気遣うサトシに、彼は思いだす。ミアレの実家に泊まった時、サトシと約束したことを。
 サトシのジム戦相手は、シトロイドでは無く自分だと。そして自分は、その時までにもっと実力をつけると。


 ランチタイムの準備中も、シトロンは考える。
 サトシは約束を覚えていてくれて、ジム戦を心待ちにしている。自分はサトシから沢山のことを学んだにも関わらず、ただバトルするだけで良いのか――。ジムリーダーとして、サトシとバトルするだけの実力を付けてきたのか――。


 シトロンが思いだすサトシのバトル、ポケモンを想う行動は、どれもアグレッシブで、とてもシトロンには出来ないものばかり。一種の憧れのようにも感じる。
 そんな、シトロンに無いものを沢山持っているサトシに対して、何か一つでも、ジムリーダーとして学ばせてあげたい……、そんなシトロンの想いが、ふつふつと伝わってくる。

 一方フライパンからは、ブツブツと嫌な音が。

  ユリーカ 「あぁ! お兄ちゃん焦げてる!」
  シトロン 「ぅえっ? あっ……あぁぁっ!?」


 本日の昼食は、ユリーカが「まるでブラッキー」と形容するほどに焦げたパンケーキ。

  シトロン 「ごめんよユリーカ」
  セレナ 「シトロンらしくないわね……大丈夫?」
  シトロン 「ちょっと考え事を……」

 普段と違うシトロンを心配するセレナは、やっぱり良い子。女の子らしい気遣いだ。


 昼食を終え、さらに荒野を進んで行くと、大きな建物が現れた。
 こここそ、ミアレシティに電気を供給しているカロス発電所。原作ゲームにも登場する施設だ。
 シトロンもプログラム設計に関わっているようで、宇宙が云々マイクロ波が云々と、得意気に説明を始める。

 近くで見てみようと言うサトシの提案で発電所に近付いてみると、シトロンが異変に気付く。
 普段は空を向いているパラボラアンテナが、下を向いていたのだ。それを「パラボラもお腹空いたのかな?」と表現するユリーカは、本当に子供らしい発想だ。

 さらに発電所に近付いてみると……、突然ピカチュウデデンネルクシオの様子が!?


 ……はい洗脳された!

 シリーズごとに必ずあるピカチュウ洗脳回は、これで2回目である。


 サトシ達に攻撃を繰り出して、発電所へと向かうピカチュウ達。
 発電所の入口には、他にも洗脳されたと思われる電気ポケモンが集まっており、扉が開くと、一斉に中へ入って行った。

 取り残されたサトシ達は、どうにかピカチュウを助け出そうと、通気口から内部に忍び込む。シトロンが建物の構造を覚えていてくれたお陰だ。

 通気口内部を這いながら進んで行くと、とある部屋に、縛られている作業員の姿が。
 その瞬間……はい落下!


 しっかりスカートを押さえるセレナ。服装的にガードが固くなっても、サービスカットはちょくちょく入れるで! といったアピールだろうか(違)


 作業員が言うには、遭難者を装って入り込んで来たロケット団に、そのまま制圧されてしまったんだとか。
 そして、発電所のプログラムを変更し、マイクロ波ポケモン誘導波に変更したんだとか。
 それで電気ポケモン達を操ったんだとか。だからパラボラアンテナが下を向いてたんだとか。

 ……地味に凄い事してるぞロケット団


 早速サトシ達は、ロケット団が陣取っていると言うコントロールルームへと向かう。扉がロックされているとのことだが、作業員たちがサブコントロールルームから何とかしてくれるとのことだ。

 コントロールルームの手前、発電所の心臓部に入り込んだサトシ達は、物陰に隠れて様子を伺うが、コントロールルームのロケット団は、カメラを通じてサトシ達を発見してしまう。

  ムサシ  「無駄な抵抗は止めなさーい」
  コジロウ 「ミアレシティの電力事情は、我らロケット団の思うがままさ!」
  ムサシ  「もし邪魔するつもりなら、ミアレシティをパニックにしてあげてもいいわよ」

 そしてニャースがマシンを操作すると……、ミアレシティへの電力供給量が大幅にダウンした。
 信号機は消え、病院は停電し、エレベーターもストップ。

 前回に引き続き、悪役っぽいことを躊躇いなく行うロケット団。それじゃあ本物の悪役じゃないか!
 ムサシとコジロウはもっとこう……、割かしどうでも良い事をどうでも良い労力でどうでも良い感じで暴れる奴等なのに!

 こうなってしまってはサトシ達も下手に動けず、大人しくすることに。

  セレナ 「サトシ……このままじゃ!」
  サトシ 「シトロン……まだか?」
  シトロン 「えぇ……」

 サトシを頼るセレナはいつも通りだが、サトシがシトロンに話を振ったのは、訳があった。
 さきほどの作業員たちによると、仕組み云々は置いといて、サブコントロールルームから電波を止めることが出来るらしい。ただ、少し時間がかかってしまう。

  ムサシ  「油断は禁物よ。なんにも出来ないように、念には念を入れておかないと」
  コジロウ 「お?」
  ニャース 「いったい何するつもりニャ?」
  ムサシ  「ポケモン達に、ジャリボーイを襲わせるのよ」
  ニャース 「ニャるほど! 誘導波……オン!」

 ……おい今日のロケット団ホントどうした!?


 誘導波が発生し、ピカチュウがサトシに対して“10万ボルト”を放った。しかしサトシは逃げない。ピカチュウの攻撃を受け止めている。

  サトシ 「ポケモン達を利用するなんて……絶対に……許せないっ!」


 電撃を浴びながらも、一歩一歩、ピカチュウに近付くサトシ。

  サトシ 「ピカチュウ……オレは負けないっ……お前を助けるまではっ!」


 シトロンは止めるよう促すが、もはやこういった状況下では、サトシは聞く耳を持たない。ピカチュウ達を助けるために、体を張って行動する……。サトシの強い決意の表れだ。



 ▲ セレナ、もっと心配そうな顔してあげて。サトシ割とピンチだから。


 そんなサトシに危機感を覚えたロケット団は、ルクシオにも攻撃を指示。サトシに突進し、ピカチュウから引き離した。

 そして、ルクシオがまさに今飛びかかろうとしたその瞬間!

  シトロン 「やめろぉっ!」


 シトロンが飛び出し、サトシを庇う。自身はルクシオの“かみなりのキバ”を受けながら。

  シトロン 「ルクシオ……ルクシオ……! 僕ですっ……」

 それを見て、ロケット団は誘導波の出力を更に上げる。さらに力を込めて“かみなりのキバ”を繰り出すルクシオ


  シトロン 「うわっ……うわあああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!」


 ……すっごい痛そうなんだけど。
 単にサトシと違って耐性の無いシトロンだからと思うかもしれないが、“キバ”の物理攻撃が加わっている分、ダメージは相当なものだ。しかもコルニとメガルカリオの時とは違い、完璧にキバが食い込んでいる。この悲鳴も納得のものか。

  ユリーカ 「お兄ちゃん!」
  サトシ 「シトロンっ……今助ける!」

  シトロン 「ルクシオ……ごめんねっ……苦しいでしょ……辛いでしょ……」

 今回は、ここからが本番と言ってもいいだろう。

 シトロンの脳裏に、先ほどのサトシの行動が思い浮かぶ。無茶で危険かもしれないけど、ピカチュウを助けようと……、自分との絆で、誘導波を振り払おうとするサトシの行動が。

  シトロン 「僕だって……負けない! 君を助けるまではっ!」


 その時。ようやく作業員からの合図が。
 ここで心臓部に電流を流せば、誘導波を止めることが出来る。

  シトロン 「ルクシオ……僕がアースになる!」

  ユリーカ 「お兄ちゃん!」
  サトシ 「シトロン!」
  セレナ 「シトロン!」



 ▲ シトロンには ちゃんと心配そうなセレナ。もはやサトシの無茶は驚かないのか?

  シトロン 「このまま放電し続けるんだ!」

 それは、シトロンにしてみれば かなりの無茶、無謀。シトロンの体を通じ、エイパムアームで心臓部へ直接電気を流そうとしているのだから。
 発電所の設計に携わった自分が遣り遂げなければならないと言う強い想いが伝わってくる。そしてまた、サトシに感化されたと言うのもあるだろう。
 危険を顧みずに行動に出るシトロンは、間違いなく、大きく成長していたのだ。

 そして注目すべきところは、この時点ではまだ、誘導波は“止まっていない”。しかしルクシオはシトロンの言う通り“ほうでん”を続けた。
 これは、シトロンの想いがルクシオに伝わったと見て良いだろう。“ほうでん”によって、誘導波は停止。2人の絆が、危機を救ったと言う訳だ。


 安心したのか、体力的に限界だったのか、倒れ込んでしまったシトロン。それをルクシオは しっかりと受け止めた。

  シトロン 「ルクシオ……ありがとう。おかげで助かったよ」

 その時、ルクシオの体が輝きだし、レントラーに進化した。これぞ正しく、トレーナーとポケモンの絆が生んだ進化である。


 一方、ロケット団も黙っちゃいない。


  コジロウ 「修復完了」 キラッ
  ムサシ  「もう1回誘導波よ〜!」

 いったい何処でそんな技術を身に着けたのか、コジロウの高速タイピングで機械が修復。再び誘導波が放たれてしまった。

 しかし、レントラーが大きく雄叫びを上げると、心臓部全体に電気が帯び始め、それは誘導波を放っていたアンテナを破壊した。

 発電所と言う重要な場所にも関わらず、物理的に破壊してしまうとは、何とも清々しい展開だ。
 誘導波が無ければ怖いものなし。レントラーほか操られていた電気ポケモン達全員の電撃が、ロケット団のいるコントロールルームに直撃、爆発、ロケット団を蹴散らした。
 これにて一件落着だ。



  シトロン 「すみません……設備を色々と壊してしまって」

 いえいえ。見ている方からすると、ピンチ打開のために躊躇いなく破壊行為を働くのは、なかなか見応えがありました。
 ミアレシティへの電力供給も、サブシステムを動かすことで問題ないらしい。

  シトロン 「サトシには、また一つ教わりました」
  サトシ 「オレは何もしてないぜ。ポケモン達を助けられたのは、シトロンのお陰だよ」
  セレナ 「そうよ。大活躍だったよ」
  ユリーカ 「うん! お兄ちゃん凄い!」
  シトロン 「そうかな……。そう言って貰えると嬉しいけど……」


 確かに今回のシトロンの活躍は、サトシの行動に触発されたものだと言える。
 けれど、それで実際に行動に出たのはシトロンだし、生身で攻撃を受けてなおポケモン達を助けようとしたシトロンの行動は、大きく評価されるべきことだ。

 もっとも、シトロン本人は謙遜している様子。あまり嬉しそうにしていないのが、その証拠だろう。


 しばらくして、発電所にヘリが到着した。冒頭、発電所内にヘリポートがあってリアルだな〜と思ったが、登場させるとは思わなんだ。(そしてBW編のヘリよりリアル!)

 ここでシトロンが動く。何かを決心したかのような表情で。

  シトロン 「ミアレシティに、僕も連れて行って貰えませんか?」
  サトシ 「どういうことだよシトロン?」
  シトロン 「僕は一足先に、ミアレシティに向かいます」
  サトシ 「それならオレ達も……」
  シトロン 「いえっ……」


  サトシ 「えっ……」
  シトロン 「僕は、自分を見つめる時間が欲しいんです。まだ自分に満足していないから……」


  シトロン 「サトシ……。君が来るまでには、成長して、ジムリーダーとして、恥じないバトルをして見せます」
  サトシ 「そっか……。でも、オレは絶対に負けないぜ!」


 まさかの展開である。

 セレナの髪型変更と違い、全く、一切事前情報が無かったシトロンの一時離脱……。
 ウチキド研究所に残ったタケシはケンジとの入れ替わりなので別として、レギュラーキャラがパーティーから外れるのは、シトロンが初である。

 しかもその理由は、シトロン自身が自分を見つめるため……。ジムリーダーなのに、サトシから多くのことを学ばせて貰ったシトロンは、このままではいけないと思ったのだろう。
 サトシがミアレに着くまでに成長して、ジムリーダーとして恥じないバトルをする……。シトロンと言うキャラと、ジムリーダーと言う立場。これほど納得の理由付けが、他にあるだろうか。XY編は物事の理由付け、ストーリーの自然さが際立って向上している。



  シトロン 「セレナ、ユリーカのこと、頼みます」
  セレナ 「任せといて!」
  ユリーカ 「あたしなら大丈夫よ! お兄ちゃんっ!」

 ユリーカをセレナに任せて置いて行くことを見ても、シトロンの決意が見て取れる。
 一人になって、自分を見つめる……。ジムリーダーとて、本気でサトシと向かい合おうと言う気持ちが、ここでも確認できた。



  シトロン 「ミアレジムでお待ちしてます!」
  サトシ 「シトロン! お前に勝って! 必ずバッジをゲットする!」
  シトロン 「えぇ! 僕も負けませんよ!」
  サトシ 「ジム戦! 楽しみにしてるぜ!」


 シトロンの決意は、パーティ全員が受け入れた。
 サトシとシトロン。旅を通じて互いを知り合っているからこそ、シトロンは自分を見つめる時間が欲しかったのだろうか。サトシに頼らず、影響されず、ジムリーダーとして、今度はシトロンが、サトシを成長させるために。

 XY編のジム戦は、どれもジムリーダーの人柄などを掘り下げた質の高い話が続いていたが、シトロン戦は、こんなにも早くからその“掘り下げ”が始まったことになる。

 サトシ達がミアレに着くまでの3話で、互いにどのような成長を見せるのだろうか。
 シトロンは自分を見つめ直して、ジムリーダーとしてのポケモンで。
 サトシはティエルノとのバトルで戦力を増強させて。

 この2人が全力でぶつかり合うジム戦が、今から楽しみでならない。


● 総括
 悔しい……! 何が悔しいかって、シリーズ中に必ずある単なるピカチュウ洗脳回だと思いきや、想像以上にシトロンについて掘り下げられた質の高い話だったもんだから悔しい!
 サトシとの旅を通じて、自身の成長とは何か思い悩むシトロン。そして、ポケモンと真剣に向き合うサトシに感化されたシトロンの行動が、ルクシオの進化と言う“形”に表れたのは、テンプレと言えど熱くなる展開だ。そしてシトロンの一時脱退……。誰がこれを予想しただろうか。
 とにかく、シトロンと言うキャラの印象が大きく変わったストーリーだった。今まで“爆発メガネ”って呼んでてごめんなさい。
 第60話のセレナに続く、これも一つの“決意”。XY編のキャラたちに込める本気度には、毎度目を見張るものがある。丁寧なストーリー立て、キャラたちの繊細な心情描写には、今回も感服である。


● おまけ
 今回のサトセレ。


● 独り言
 離脱したシトロンだが、果たしてジム戦後、一筋縄でパーティーに復帰するのだろうか。
 現在のところ、放送予定内容はミアレ内までしか発表されていない。XY編の予測できない展開を考えると、シトロンがしばらくジムに留まる可能性も否定できないのだ。
 そうなると気になって来るのは、こいつの存在である。

 期間限定でレギュラー交代……? そんな予感がしたりしなかったり。

 ただ個人的には、ミアレの後にセレナの実家に遊びに行くような展開も密かに期待している。ついでにセレナの自転車壊さないかな。