ポケモンXY感想−86話目
第86話 「シャッターチャンスはファイヤー! 伝説を撮れ!!」
アルトル山と言う、原作には無い火山近くを通りかかったサトシたち。
そこで見つけたのは、懐かしいポケモンだった。
リザード!
火山帯なら野生として生息していてもおかしくは無いが、その姿を見たピカチュウとデデンネが、リザードに向けて駆けだした。まるで知り合いに会ったかのように。
しかしリザードは容赦なく“かえんほうしゃ”をぶっ放す。慌てて避けるピカチュウとデデンネ。サトシとユリーカも怒り新党。
どうしてリザードはこうも狂暴なのか。
とは言ったものの、リザードに限らず、野生ポケモンともなれば、自分の縄張りを侵す人間に攻撃するのは普通だろう。
それが自然界の習わし、野生ポケモンの定めなのだから。
……とか思ったのも束の間、このリザードは、トロバのポケモンだった。
そう言えばヒトカゲ時代もヤンチャだったっけ、トロバのリザード。
と言うより、サマーキャンプ以来のトロバ登場である。フウジョポカロンで出てきたような気もしたが、あれは出たには入らない。約1年ぶりの本格登場だ。
そんな久しい登場で のっけから丸焦げとは、なかなかに厳しい扱いである。
で、リザードは別に狂暴と言う訳では無く、単に機嫌が悪いだけとのこと。
何をしても直らず、所構わず“かえんほうしゃ”を吐き出すリザード。
それを見て、サトシが察す。もしかして、バトルがしたいんじゃないかと。
何故そういう発想になるのかはさておき、意外にもその予想は的中、バトルを求めるリザード。
……なんだろう。こんな顔のリザードを見るのって、もしかしたら初めてかもしれない。
無印時代、リザードは終始狂暴だった訳で、我々ポケモン世代の間では、リザード=言うこと聞かない、みたいなイメージがある。トロバのリザードは、ようやくその概念を崩してくれた訳だ。
バトル相手はヒノヤコマ。炎ポケモン同士の対決だ。
バトル開始カットインにまた新しい演出がなされており、その辺はアニメならでは。
ヒノヤコマと言えば、マーシュ戦ではXYの代表ともいえるニンフィアに打ち勝った、もはや単なる雑用とは呼べない活躍を見せている。
そんな流れに乗っているのか、“はがねのつばさ”でリザードに打ち勝った。
最近のサトシさん強い。
さて、トロバと言えば、ポケモンの写真を収集しているトオル的存在。
てっきりその道を極めるのかと思いきや、どうやらジム戦にも挑戦しているようで、ハクダンジムを攻略したんだとか。虫ポケ・氷ワザ相手ならリザードで余裕か。
けれどここは、簡単に流すことは出来ない。
と言うのも、トロバがバッジをゲットしていると言うことは、最終的に、カロスリーグで戦う可能性が捨てきれないのだ。
現状、カロスのジムバッジをゲットしているライバルポジションは、ショータ、ティエルノ、そしてトロバ。カロスリーグでは、この3人がサトシの主だった敵になるのだろうか。
可能性で言うならば、複数回登場済みのサンペイも怪しい。Z編で合流するであろうアランやマノンも怪しい。今回のリーグは、モブキャラとのバトルが皆無の可能性すらある。なんにせよ楽しみだ。
で、いきなりトロバがセレナに注目。
トロバ 「本当だ! 確かに似合っています!」
セレナ 「なに……?」
▲ 舐めまわすようにセレナを見るトロバ。見かけ幼いから許される節がある。
トロバ 「いえ。セレナの今のファッションとヘアスタイルは最高だって、ティエルノから連絡があったもので!」
お前らもうちょっとマシなこと連絡取り合え! ってか連絡するほどのことなのかティエルノよ!? あと今さら髪型変更の話題出て来るとは思わなかったよ!
セレナ 「んっ……どうもありがとう……」
と、顔を赤らめてお礼するセレナではあるが、ここで恒例、“似合ってる”と言われた際のセレナの反応の違いを見てみよう。
・対トロバ
・対ティエルノ
・対サトシ
セレナの好意は明白だ。
今回のトロバのセリフをサトシが発してたら、いったいセレナはどんな反応を見せたのだろうか。
ところで、何故こんなところにトロバが居るかと言うと、なんと、ファイヤーの写真を撮りに来たらしい。
シトロン 「サンダー、フリーザー、そしてファイヤー。いずれも存在は確認されているものの、実際に目撃するのは非常に難しいポケモンなんです」
ユリーカ 「私もファイヤーに会いたい!」
サトシ 「(やべぇ、オレ全部会ってる……)」
トロバ 「様々な資料を集め、分析した結果、ファイヤーはあのアルトル山に居るんじゃないかと」
サトシ 「じゃあトロバは、ファイヤーまで写真に?」
トロバ 「はい。図鑑に登録されているポケモン全部に会い、フォトコレクションするのが夢ですからね!」
そう言ってトロバは、サンダーとフリーザーの写真を見せた。
伝説のポケモンがそんな簡単に撮られちゃマズいだろと突っ込みたくなるが、それだけトロバは努力したのだろう。
セレナ 「うそっ……伝説のポケモンに会ってるんだ!」
ユリーカ 「良いなぁ!」
サトシ 「すげぇぜトロバ!」
ピカ 「ぴかぴか!」
多分、サトシとピカチュウは社交辞令的に言ったんだと思う(笑)
で、トロバは他の写真――コフキムシの写真をサトシたちに見せ、その珍しさを詳しく説明し始める。曰く、触覚の長さが違うんだとか。
セレナ 「……それが、凄いことなの?」
トロバ 「勿論です! これらのコフキムシに出会い、フォトコレするのは至難の業なんです! 特にこのバージョンはレア中のレア! なかなか入手できない逸品なんです! 他にも、髭が真っ直ぐ伸びているこのナマズンは、ウール湖でのみ確認されていると言うお宝。そらからこのゴローニャ! この体表の組み合わせパターンは他とは絶対に異なっており、近年になって存在が確認された知る人ぞ知るレア中のレア! この僕も撮影にはうんたらかんたらうんたらかんたらごろーにゃごろーにゃごろーにゃごろーにゃ……」
おい、途中からゴローニャの説明の繰り返しになってたぞ。
トロバ 「……とまぁ、これが僕のフォトコレです。お分かり頂けましたか?」
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・
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サトシ 「あぁ! 色んなポケモンに出会ってたんだな!」
トロバ 「はい!」
サトシいま流したよね。絶対に適当に流したよね。その判断は正しいと思う。
あとヒノヤコマのジト目は珍しいと思う。
一方、そんな彼らを木陰から見張っていたロケット団。
ムサシ 「あのトロバって相当なオタ↑ク↓ボーイねぇ」
おいオタクボーイって言われてるぞトロバ。
ロケット団のネーミングセンスは地味に洗練されていて、シトロンへの“ジャリメガネ”は、シトロンのキャラを決定づける大きな要素になり得るのであった。眼鏡キャラの宿命か。
で、そんな話を盗み聞きしたロケット団が、黙っている訳が無い。
サトシたちより先にファイヤーをゲットしてやろうと。さすれば大幅な戦力増強になり、ピカチュウを楽にゲットできると。
ファイヤーをサカキに献上しない当たり、どれほどピカチュウ命かが分かる。追って追って18年だもんなぁ……。
サトシたち一行は、アルトル山の登山を始める。
その道中、トロバはここにファイヤーが居ると言う証拠の写真を見せてくれた。
サトシ 「これが……ファイヤー?」
シトロン 「はぁ……はぁ……」
トロバ 「はい。間違いありません」
シトロン 「はぁ……はぁ……」
ユリーカ 「これっぽっちしか写ってないのに、どうしてファイヤーだって分かるの?」
シトロン 「はぁ……へぇ……」
トロバ 「他のポケモンでは、この形と翼は有り得ません。それに、以前からこのアルトル山では、ファイヤーの姿が目撃されてるんです」
シトロン 「はぁ……げほげほっ……」
トロバ 「その写真はこの山で偶然撮ったもので、ファイヤーには気づかなかったそうですが、その大きな岩がある場所へ行けばファイヤーに会える! 僕はそう信じています!」
シトロン 「はぁ……へぇ……はぁ……」
セレナ 「これが、唯一の手掛かりなのね」
シトロン 「あ゙ぁ……ぅ゙っ……ふっふっふっ。なるほど岩ですか。僕の出番のようですねぇ!」
いや待てシトロン。さっきから はぁはぁぜぇぜぇ煩いから。
シトロンが取り出したのは、“岩探し1号”と言う、ワリオみたいな顔つきのマシン。1号だが、今のところ、特に2号以降は無い。
シトロン 「これは写真に写っている物体の形状を記憶し、自動で探し出すマシンなのです!」
トロバ 「素晴らしい!」
シトロン 「褒めるのはまだ早いですよトロバ。僕への賛辞は、ファイヤーを発見してからお願いします。……岩探し1号、スイッチオン!」
いや……、賛辞と言うか、惨事になりそうで怖いんだけど。
それでもメカは、珍しく問題なく調査を進める。
その途中、トロバが珍しいイワパレスやバタフリーを見つけて撮影しだす。大興奮で撮影されるポケモンの心境やいったい……。
しかし、トロバの気持ちは分からんでもない。
私も猫を見つければカメラを向けるし、撮っている最中は割と飽きない。……そうか、猫を撮影するようなものなのか!
で、その隙に先回りするロケット団。
そして、タイミングよくメカがお目当ての岩を見つけた訳で、ピンポンピンポン正解の鐘を鳴らす音を警報と勘違いし……。
ムサシ 「面倒臭いロボットねぇ!」 キック!
― どっかぁぁぁぁぁん
爆発ノルマ、ここに達成。
ロケット団が原因で……と言うより、ムサシの蹴りでマシンが爆発したのは、地味に2回目である。
爆発音を聞き、慌てて駆けつけたサトシたち。
変わり果てた岩探し1号の姿を見て涙するシトロン……。いや、爆発割合の方が高いから泣かれても困る。
暴走したマシンは火口の溶岩に突っ込み、ピカチュウを奪ったロケット団とのバトルでいくつもの岩が火口に降り注ぎ……、その時、火口から重低音のような鳴き声が聞こえてきた。
セレナに抱き付くユリーカ可愛い。
そしてその直後、火口から激しい火柱が上がり、それと共に、伝説のポケモンが姿を現した。
堂々たる登場。なんとも神々しい。
サトシ 「これが……、伝説のポケモン、ファイヤー……!」
いやあなた何回か会ってますから。
そんなファイヤーは、やはり相当ご立腹の様子。見よ、この塵を見るような目つきを。
ファイヤーをゲットしようと攻撃を加えたロケット団は速攻で蹴散らされ、問題はその後。
ファイヤーはサトシたちをロケット団の仲間だと勘違いし、攻撃し始めたのだ。
敵じゃないと訴えても聞く耳を持たず、サンダーと違ってピカチュウの電撃で会話をするのも不可。仕方なく、ゲコガシラの“みずのはどう”で対抗するが……、水ワザが蒸発した。ゲンシグラードンじゃあるまいし……。
ヒノヤコマ最後の雄姿……が、やはり力の差は歴然。
ヒノヤコマはファイヤーの炎に撃ち落とされてしまった。
火口の岩場に倒れ込むヒノヤコマを助けようと、サトシが火口にダイブしようと動く。
いや待って。流石にそれはマズい。トロバ、ゲコガシラ、ピカチュウも慌てて制止。火口ダイブは、流石のサトシでも耐えられるものではない。
サトシ 「ヒノヤコマ! 待ってろぉぉぉ!」
声を裏返してまで叫ぶサトシ、ここの松本さんの声は本当に熱かった。
しかし、それがファイヤーの癪に障ることになる。
サトシたちを目がけ、ファイヤーが強力な炎を放ったのだ。
まぁ、ロケット団が喰らっている以上、大丈夫かとは思ったが、どうもそれ以上の炎ワザを放ったらしく、明らかに勢いが違う。
いくらアニメの炎とは言え、これを喰らってしまってはマズい。特に高威力ワザに耐性の無いであろうトロバが喰らうのは非常にマズい。
その時。
力尽きていたヒノヤコマが動く。サトシを助けようと、残りの力を振り絞るかのように、サトシの元へ急ぐ。
それは眩い光となって、ファイヤーの炎ワザを追い越して、そして……。
ファイヤーの攻撃の盾となり、ヒノヤコマはサトシたちを守り抜いた。
サトシを……仲間たちを守るための進化。これほど美しい進化は無いだろうし、サトシたちだからこそ、そういった進化が多いのだろう。単なるレベルアップではなく、トレーナーとのストーリーを織り交ぜた進化と言うのは美しい。
進化とともに、新たに習得した“ブレイブバード”。
持ち前の素早さを活かし、ファイアローはファイヤーと互角に渡り合う。炎ワザを避け、“ブレイブバード”で迫り、そして……。
やはり伝説には敵わないのか。
“だいもんじ”を直に喰らってしまったファイアローは、火口の溶岩へと真っ逆さま。もう下に足場は無い。完全に、溶岩に落下していくのだ。
サトシ 「ファイアロォォォォォォォォォ!!!」
サトシは走り出す。
トロバやピカチュウたちも、その突然のサトシの動きを予想できず、彼の行動を許してしまった。
向かう先は、落ちていくファイアロー。それは即ち、サトシも溶岩に落下することを意味する。
いくらポケモンのことを第一に考えるサトシであっても、この行動はダメだ。自分の命を大切にすべきだ。
けれど、自分の命の危険を顧みずに行動するのが、サトシの性格である。
考えてみると、第2話、プリズムタワーから落ちるガブリアスを助ける時から、彼の行動はカロスメンバーの目に留まっていた。最近では、同じく落下するヌメルゴンとフラージェスを助けるために、飛行艇から飛び降りた。
それがサトシと言う人物なのだ。
……ほら、ファイヤーも「えっ!?」って顔してる。
サトシのポケモンを想う気持ちを痛感したファイヤーは、サトシを助けに……行かず、彼を助けたのは、ゲコガシラだった。
万能ケロムースを連発し、接続させ、ムースの命綱を作り出す。サンペイ回でシトロンを助けた時と同じように。ゲッコウガへの進化が確定しているゲコガシラ。ケロムースの活躍は、これが最後になるのだろうか。
シトロン 「はぁ……間一髪でしたよ!」
セレナ 「もぉ……無茶ばっかりしてぇ!」
サトシ 「へへっ……ごめん」
いや笑い事じゃないですぜ。
けどある意味、ポケモンのことを想うサトシの性格を、再確認できた訳だ。
溶岩に飛び込むなんて、無印時代のグレンジムでもやらなかったことであり、危険を顧みない行動に出ると言う計りに掛ければ、サトシのポケモンへの想いは、この18年間で、相当上昇してると言えよう。
セレナたちも、サトシの無茶にハラハラさせられっぱなしであろうが、そんな彼を支える仲間が居るからこそ、サトシも安心して旅を続けられるのだと思う。
▲ 今回ばかりはピカチュウも怒った。
無茶な行動で、サトシとポケモンの絆を目の当たりにしたファイヤーは、無言でその場を飛び立った。
同じ炎・飛行タイプのポケモンを命を懸けて守ろうとしたサトシに、伝説のポケモンなりに、感じるものがあったのだろう。ある意味サトシは、ファイヤーに認められたのかもしれない。
互いに心配し、守ろうとし合うサトシと彼のポケモン。その深い絆は、もはや言うまでも無い。
でなければ、あの土壇場でヒノヤコマがファイアローに進化する訳が無いのだ。ファイアローに限らず、必死に制止し、本気で心配するピカチュウとゲコガシラもだ。
そんなサトシたちを、トロバはカメラにおさめていた。
彼もまた、サトシの魅力を実感した一人であり、きっと、サトシを目標として今後も成長していくことだろう。
● 総括
ヒノヤコマ進化回と考えれば当然重要回だが、トロバをはじめキャラたちの特徴や、詰め込み過ぎず多すぎずの絶妙な展開、そして迫力の描写など、藤田脚本の特色が存分に引き出された、非常に質の高い話だった。
ファイアローへの進化でますます戦力増強のサトシ。今後のバトル展開にも期待大だ。
● 次回ひとこと予告
→ このタイミング(次回予告)でユリーカ声優変わるんかーい!?