ポケモンXY感想−72話目

第72話 「こわいイエのおもてなし!」


 辺りは暗くなりつつあるが、目的のポケモンセンターに着く気配が無い……そんなサトシたちご一行。

  ユリーカ 「あれ? ここって……」
  シトロン 「さっきも通ったよね」
  セレナ 「おっかしいなぁ……迷っちゃったみたい」
  シトユリ 「えっ!?」


 ▲ 無条件に可愛い。


 XY編では珍しく、道に迷った様子。

  サトシ 「確か、さっきは左に行ったんだよな」

 ……と、冷静に判断するサトシ。兄妹のように迷ったことに声を上げることもなければ、「何で迷ったんだ〜」と言いだすでもない。こういった点を見ても、XY編のサトシは大人びている。……単に案内役がセレナだから、と言う理由もありそうだが。

 ここでセレナが、この辺りで噂の“怖い家”について口にした。
 夕暮れ時に、ある深い森を抜けると、古い家があって、中に入るとその名の通り、怖い目に遭うんだとか。
 怖がるシトロン、あえて行きたくはないと言うセレナ、それにガッカリするユリーカ。ユリーカの怖いもの知らずは、第14話から変わっていない。

  サトシ 「よし。次は右に行ってみよう。森を抜ければポケモンセンターだ!」

 そんな“怖い家に”興味が無いのか、サトシは新たなルートを歩みだす。やはりXY編のサトシは大人びている。


 ……はい到着! おおよそ予想通りである(笑)

  サトシ 「セレナ、これって……」
  セレナ 「まさか……」
  シトロン 「電気が点いてます!」
  サトシ 「ってことは、誰かが住んでるんだな」
  シトロン 「噂は、あくまで噂ですよ。それに、ここがその怖い家だなんて……」
  ユリーカ 「えぇぇぇ詰まんなーい!」

 そんな折、タイミング悪く雨が降り出した。
 そして、そんなタイミングを見計らっていたかのように、家のドアが開き、年老いた男性が姿を現す。

  男性 「こんばんは。こんな遅くに、どうされました?」
  ユリーカ 「あのっ! ここ怖い家なんですか!?」

 おいおいユリーカ、開口一番それは失礼やで。

 で、そう呼ぶ者もいるが、別に怖い家ではなく、至って普通の家、とのこと。その男性――コールは、サトシたちを家の中に招き入れてくれた。

 ふかふかのタオルに、美味しい食事までご馳走になったサトシたち。
 傍から見ればコールは良いおじいさんだが、シトロンだけは疑問に思う。どうして急な来客に対して、人数分の用意があるのか、と。

 その時、“なにか”が部屋の隅を横切った。
 サトシたちは気付いていないようだが、その影はどう見てもゲンガーである。ここで視聴者に“ネタばらし”することで、この先の怪奇現象に怖がること無く、むしろ怖がるサトシたちを見て楽しめるといった配慮だろうか。


 “人数分の用意”の謎を、シトロンは皆に話す……のだが、サトシたちは気にしていない様子。
 特にサトシ。きっと、人を疑うことを知らない純粋な子なんやな……。

 だがしかし、ここ一帯のシーンで、家の“ボロさ”がちょくちょく描写されているのも気になる。傷だらけの壁に、至る所にある蜘蛛の巣。イトマルアリアドス以外で蜘蛛が居るのかは謎だが。


 食後のティータイムにまで お呼ばれしたサトシたち。流石にセレナは怪しいと思ったのか、この家が“怖い家”と呼ばれる所以を聞いてみることに。

 コール曰く、この家は私が道に迷って辿り着いた家で中に入ると見知らぬ男がうわあああぁぁぁぁぁぁ!

 な ぜ そ う な る !?


 ……的な作り話をコールがしているうちに、いつの間にか“怖い家”と呼ばれるようになったんだとか。いい迷惑である。

 その時、頭上から物音が! 壁の絵画が揺れ動く!

 ユリーカは目を輝かせて「幽霊さーん!?」と声を上げるが、シトロンは謎の怖がり方で椅子から転げ落ちる。

  シトロン 「そんなことありません! 科学で証明できないものは無いんだーす!」
  ユリーカ 「だったら最初から怖がらなければいいんじゃない?」
  シトロン 「くぅぅぅぅそれとコレとは別ですっ!」



 ▲ この顔である。


 そこでシトロンが取りだしたのは、いったいどのような局面を想定していたのか非常に疑問な、“不思議ウォッチ君”。

  サトシ 「科学の力ってすげー!」

 久々に聞いたその言葉。


 早速そのマシンで怪奇現象の特定に乗り出すシトロンたち。
 いつの間にか雨は上がっており、空に浮かぶ月を見ていると……。


  シトロン 「ぅだあああぁぁああぁぁぁぁぁぁ!?」
  サトシ 「オレの影が……!?」

 案外サトシの反応が薄かったことはさておき、シトロンはマシンで調べてみるが、反応はあれど、姿が写らず。
 そうこうしているうちに、サトシはゲンガーに、セレナはゴーストにイタズラされて、軽くパニック。セレナ、ポケモンから舐められすぎである。

  サトシ 「やっぱり何か居るぜ」
  シトロン 「マシンに反応があるのに姿が見えないと言うことは……」
  セレナ 「私たちのすぐそばには、永年この家に住み着いている幽霊たちがたくさん集まっていて……言うんじゃ無かった……」

 これまたニャスパー回の設定が。


 その時、CGの階段を登ってくる、不気味な足音が。勿論そこには誰もいない。
 そして登り切ったと思ったら、シトロンの体が宙を舞い、マシンを奪い取ったのだ。
 
  ユリーカ 「こらー! お兄ちゃんのマシンを返せー!」

 と、臆することなくマシンを追っていくユリーカ。幽霊さんに会いたいと言っていた彼女だが、シトロンの発明を優先する様は、たとえ怖がりなシトロンを馬鹿にすることはあっても、兄想いであることが伺える。


 で、追いかけるうちにとある部屋に入ったサトシたちだが、その部屋でマシンは静止。そして突然、誰もいないはずなのにピアノが鳴りだした。

  セレナ 「あぁぁっ! このピアノの音色が、家の中に住み着いた幽霊たちをさらに集めて、迷いこんだ少年少女たちを浚って、そのまま一緒に姿をけして……言うんじゃなかったぁ……」

 セレナ、気持ちは分からんでもないが、幽霊たちを集めるには不釣り合いな、相当ノリノリな曲だぞコレ。しかもピアノじゃない何かが加わってるぞコレ。

 で、ここに来てシトロンのマシンが役に立ち、揺れるカーテンにゴースが潜んでいることが判明。
 サトシとセレナが図鑑を向けると、さらにゴースト、ゲンガーが、椅子を揺らし、ピアノを弾いていたのだ。ピアノ弾けるゲンガーとか不釣り合いなところがまた可愛い。

  コール 「いかがでしたかな? ゲンガーたちのおもてなしは?」
  サトシ 「えぇ。ゲンガーたちにとって、来客を怖がらせるのが、最高のおもてなしなのです」


  セレナ 「えぇっ!?」
  シトロン 「コールさんは、ゲンガーたちが居たのを知ってたんですが?」
  コール 「もちろん。大切な友人たちですから」

 ここでネタばらしと来ましたか。
 こうやってコールとゴースたちがグルになって来客を怖がらせていることが、“怖い家”と呼ばれるに至った所以らしい。コールの悪ふざけにゴースたちが協力しているのか、またはその逆なのかは定かではないが、いい迷惑!
 これで、これまでの怪奇現象は説明が付くし、人数分のタオルや食事も、予めゴースたちが“この4人を屋敷に誘い込む”とコールに伝えていたとしたら、説明が付く。

 それよか、このノリノリなゴース、ゴースト、ゲンガーを見て、ポケモン世代の皆さんなら、“ポケモンタワーでゲットだぜ”を思いだしたはずだ。
 ゴーストポケモンの浮遊音(ヒュウゥウゥゥ〜、みたいなやつ)も当時と変わらないし、本当にXY編は、ポケモン世代に懐かしいネタを提供してくれる。


 で、めでたしめでたしかと思いきや、ユリーカが消えた。探しに行ったサトシも消えた。そしてセレナも……。ゴースたちは知らんと言う。

 セレナに関しては、床下への穴に落ちてしまったことをシトロンが目撃。それをコールに話すと、リビングに地下へ通じる階段があることを教えてくれた。
 シトロンとコールで探しに行くのかと思いきや、わざとらしく頭を押さえるコール。何か思いだしそうなんだとか。……頭痛でもなんでもなかった!

 仕方なく一人で地下へと進んで行くシトロン。

  シトロン 「怖くない……怖くない……」

 と、薄暗い地下に下り立ったシトロンだが、その先にあったのは、お札がびっしりと貼られた扉……。こんなんいきなり出てきたらチビるわ!

  シトロン 「だけど……行かなきゃ!」

 あれほど怖がっていたシトロンだが、サトシたちを助けるために勇気を振り絞るシトロン。ちゃっかりハリマロンを出しているのがまた可愛い。

 扉に近付くと、中からサトシたちの声が。それによって、いくらか安堵したシトロン。
 どうやら扉が固くて開かないらしく、シトロンが引っ張ってみても、やはり開かない。

 ここで閃いたシトロン。
 扉は錆びついており、それならゲコガシラのケロムースが有効だと。
 ……いや、そんな効果無い気がするけど。


 で、実践して開いたもんだから、ケロムースの万能さがまた実証された。

 余談ながら、サトシは扉を“引き開けた”。それじゃシトロンが頑張っても扉は開かないはずだ。



  シトロン 「ユリーカ!」
  ユリーカ 「お兄ちゃーん!」

 再会した兄妹は、思わず抱きしめ合う。

  シトロン 「ユリーカ、怖くなかったかい?」
  ユリーカ 「うん! ぜんぜん怖くなかったよ! お兄ちゃんは怖くなかった?」
  シトロン 「まぁね。可愛い妹を救うためだもん」
  ユリーカ 「えへへっ」

 ここのユリーカが可愛いのなんの。
 妹を心配するシトロンと、なんだかんだで兄が大好きなユリーカ。こうやって抱き付き合うのは、XY編通してあまり見られない描写だろう。
 2人の絆、仲の良さが、ここで垣間見れた気がした。

 そんな2人を微笑ましく見守るサトシとセレナ。
 その時ピカチュウが、古びた手帳を発見した……。


 地上に戻ると、コールとゴースたちが笑顔で出迎えてくれた。
 手帳のことを話すと、コールはそれを読んでみてくれと言う。

 シトロンが手帳を読み上げる。
 怪奇現象に悩まされていた手帳の持ち主は、父親に頼み、誰も入って来れない地下室と、そこに至る通路を作って貰った。霊媒師にお札を貰い、地下室の入口に張り付けた。それでも怪奇現象は収まらないので、この家を引っ越すことになった……。

 地下室と、そこに至る通路、そしてお札は、手帳の持ち主が、身を守るために作ったものだったようだ。

 手帳に挟まれていた、1枚の写真。そこに写る若者は、どこかコールに似ている。

  コール 「あぁ思いだしました! それ、私です」

 コールは子供の頃、怪奇現象に悩まされ、結果、家を引っ越したんだとか。
 しかしその怪奇現象の正体はゴースたちで、ただ遊びたかっただけ……。コールはそんなゴースたちの気持ちに気付いてあげられなかった……。
 その勘違いが、長年の時を経て、今、ようやく真実に気付いたのだ。


 ……いやいやいやいや待って!
 引っ越して行って、偶然元の家に戻って来て、地下室の存在を忘れていて、ゴースたちと来客を驚かしてる?

 ……無理無理無理無理無理がある!
 なんかちょっとしんみりなBGMで感動系を誘いだそうとしてるけど、ちょっと無理あるんじゃないですかコールさん!

 ……まぁそのことから、やはりこれは全て、コールとゴースたちが仕組んでいた“おもてなし”だった可能性が高い訳だ。


 ここで、何気なく写真の裏を見たユリーカ。

  「 07/14/1758 」

 ※ この日付に、特に裏の意味は無かった!


  サトシ 「えぇっ!? 今から200年以上前になってるぞ!」

 おぉ……。アニポケ内では、恐らく初めて、年号を明確に表す描写が取り入れられたと思われる。
 これまでも、フラベベ回で新聞の日付が現実の放送日だったりしたが、それはスタッフのお遊びだった可能性が高い。
 しかし今回の年号描写は、話のキーとして盛り込まれている。かな〜りアバウトだが、アニポケ内の年号は、1958年以降となる訳だ。
 ……もっとも、アニメ内に“インサイト”っぽい車が登場している以上、2009年以降なのは明白だが。


  コール 「はははっ……全て思い出しましたよ」


  コール 「 私 、 死 ん で い た ん で す 」



 ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁああっぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?!?!?


 ……と悲鳴を上げてみたものの、これまでの事柄から、コールとゴースたちが怖がらせようと仕組んでいたことは明白だ。
 写真と手帳も、コールが意図的に年号を書きこみ、地下室に置いていた可能性が高い。
 そして何より、「私、死んでいたんです」のくだりで、まるですべてを分かっているかのごとく、ゴースが笑っていたのだから。


*−−−−−*−−−−−*−−−−−*−−−−−*−−−−−*


 気が付くと、サトシたちは森の中で眠っていた。
 おそらくゴースたちが運んだのだろうが、“実は夢でした”と錯覚させることで、コールとゴースたちは、戦略的に、“怖い家”の噂を広めているのではないだろうか。
 それが“何のために”と聞かれれば、答えられるだけの描写が無かったので不明だが、それがコールたちの“生き甲斐”なのではないだろうか。

 狐につままれた……訳ではないが、コールとゴースたちの“おもてなし”に、まんまと嵌ってしまったサトシたちだった。



 ところで……。



 何 故 コ ー ル の 影 が 無 い の だ ろ う か ?


 真実はユリーカのみが知っている……のかな?



● 総括
 ニャスパー回に続くホラー回だが、ここに来てガチの幽霊である。明確に幽霊が描かれたのは、無印編の夏祭り、DP編のサマーキャンプに続いて3回目……かな?
 そしてもう一つ特筆すべき点は、アニメ内に年号が登場したこと。日付の描写はあれど、年号は何気に初なのではないだろうか。
 まぁその辺は良いとして、ゴース、ゴースト、ゲンガーの登場は、無印編の「ポケモンタワーでゲットだぜ」を思い起こす。前回に続き、ポケモン世代が唸るネタを盛り込んでくれるのは好感が持てる。


● 次回ひとこと予告
 → とうとうサトシとピカチュウの直接会話が!?