喋る!

 一部では既に話題になっているが、関東基準11月26日放送のXYZ第98話「ピカチュウ、プニちゃんの夢を見る!」において、とんでもない“あらすじ”が公開されている。

 要約すると、ピカチュウたちが人間の言葉を喋り、一部に至っては進化もしくは退化しているらしい。夢だろうけど。


 これ、かなり凄い事ではないだろうか。

 アニポケ内で“ポケモンが喋る”と言えば、ニャーストランセルが思い浮かぶ。
 しかしニャース血の滲むような努力の末、ニャースとしての能力と引き換えに言葉を手に入れたという過去があるように(トランセルは多分ノリでイヤンイヤン喋ったんだと思う……)、そもそもポケモンは喋らないものである。
 喋らないからこそ、ポケモンは“ポケモンとして”描かれている訳で、現代における人間と動物の関係性のように捉えることもできる。

 デジモン然り、妖怪ウォッチ然り、ハム太郎然り、動物系アニメと言えばキャラクターが喋るのが当然のようになっているが、ポケモンニャースを除き、頑なにそれを拒んで来た。これはポケモンの大きな特徴だと思う。

 映画における伝説・幻ポケモンは一応“テレパシー”と言う形で言葉を発しているが、個人的には、それはあまり好まなかったりする。喋ってしまってはポケモンとしての魅力が薄れると言うか、ポケモンらしさが欠けると言うか……。
 だからこそ、ポケモンが全く喋らなかった「セレビィ時を超えた遭遇」と「水の都の護神」は個人的に評価が高い。

 一方、偉大なる首藤氏の読み物によると、ピカチュウたちは、旅を続けるにつれて言葉を発するようになる“予定”だったらしい。
 予定、と言うのは、結局それが実現しなかったからであって、その理由は、「大谷さんが“ピカ”だけで喜怒哀楽を完璧に表現したから」らしい。


 さて。それ以降、ピカチュウたちは相変わらず鳴き声だけでコミュニケーションを取って来た訳だが、XY編に入り、変化が訪れる。

 第78話のピカチュウ映画特別回で、それは起こった。


 ピカチュウ 『悪さはこの私が許さない!』

 ピカチュウ喋ったあああぁぁぁぁぁぁ!?!?!?

 ……と、当時とんでもなく驚いた訳だが、アニメ内におけるアテレコとは言え、ピカチュウピカチュウの声で喋ったことに変わりは無く、無印から始まって17年目にして、“当初の構想”が蘇った訳だ。


 考えてみると、これは伏線と言うか、前触れだったのかもしれない。
 注目の第98話だが、夢の中の話ではあるが、ピカチュウたちが喋る……。しかも あらすじを見るに、ピカチュウのみでなく、他のポケモンたちも喋ることが予想される。

 これ、とんでもなく凄い事ではないだろうか(2回目)。

 ポケモンは喋らないからこそポケモンらしいとかどうとか書いてきたが、やはりポケモンたちが喋る姿は見てみたい。普段喋らないキャラだからこそ、そのイレギュラーな状態に注目せざるを得ないのだ。

 ピカチュウたちが喋るとなると、彼らの想いを“正確に”把握することが出来る。
 これまでまるでタブーとされてきたかの如く喋ることを拒み続けてきたポケモンたちが、自らの意志を、我々に分かる言語で発する――。
 これは、ポケモンアニメにおいては画期的なことと言えるだろう。喋ることで、ストーリーの幅が大幅に広がる訳だし、ポケモンたちが活躍する所謂“ポケモン回”においては、これまでとは全く違った展開にだって出来る。

 例えるなら、無印時代の「きょだいポケモンのしま」。
 これはピカチュウたちがサトシたちと逸れ、彼らを探しに行動する話なのだが(なお脚本は首藤氏)、ピカチュウたちの鳴き声が、字幕で訳されていた。

 字幕でも当時色々と衝撃だった同話。

 今後放送予定の第83話は、それ以上の衝撃を受けることになると思う――。
 果たしてどんな内容なのか、ポケモンたちの声はきちんと担当声優さんの声で再現するのか、誰が喋り、誰が進化・退化しているのか、などなど。

 アニポケ18年目にして完全に初パターンのストーリーとなりそうなので、今から楽しみである。