ポケモンXY感想−80話目

 第80話 「テールナーヤンチャム! 魅せろ炎のパフォーマンス!!」


 まわる風車はフウジョタウン。山沿いに佇む静かな町だ。

 そんななかで、髪をなびかせ、昇る朝日を見つめるセレナ。
 これはまさしく、第60話で髪を切った時と同じ雰囲気だ。変わった自分が2度目のトライポカロンに挑戦する、彼女の決意とも取れるシーン。頼むから字幕をもう少し配慮してくれ……。
 テールナーヤンチャムもセレナと同じ気持ちなのだろう。セレナのリベンジが、いま、始まろうとしていた。


 ポカロン開始前、セレナは母親――サキと電話していた。
 前回は散々な結果を見せてしまったが、今回はよほど練習を積んだのだろう。「ちゃんと見ててね!」と告げているあたり、それが実感できる。

 前回はサキに貰った衣装だったが、今回はコチラ。

 ……なんで持ってんねん。
 ファッションショーでセレナが着ていた振袖だが、貰ったような描写は無かったし、その後マーシュが絡んだ話も無い。……買ってたのか?

  サキ  「悪くないけど、派手過ぎじゃない?」
  セレナ 「ママが言うなら、これでオッケーねっ」

 まだ残っていた、この設定。
 今後のポカロンは毎回違う衣装になるであろうし、こういった遣り取りは、今後も続くのかもしれない。

  サキ  「セレナ。今できる全力を出しなさい。当たって砕けろよ!」
  セレナ 「うん!」

 まだ残っていた、この設定。
 砕けちゃダメだと思いはするが、これも親子なりの絆の形なのだろう。


 さて。早速会場入りしたセレナたち。
 開演前から多くの観客で賑わっているが、いまのところ、セレナに緊張は見られない。練習を積んできたことで、こうして平静を保っていられるのだろう。

 ……が、そんな平静を乱す人物が登場する。

  ミルフィ 「あら、セレナじゃないの!」
  セレナ  「あっ……ミルフィ!?」
  ミルフィ 「久しぶりね、みんな」


 ▲ 初対面のヤンチャムは警戒か。


 本当に久しぶりだよ……。第26話、約1年2か月ぶりだよ……。
 そんな期間が開いたおかげか、ミルフィの声優変更は特に違和感は無し。
 彼女の特徴でもあった少し低めの声を聞くと、あぁ、こんなもんだったよな、と、すんなり受け入れられた。……まぁ、ミルフィをピンポイントで何度も録画を見直している方からしてみれば別だろうが。

 で、ミルフィもトライポカロンに出場するらしい。
 ポフレマスターを目指すんじゃ無かったっけ?……と言う冗談はさておき、ミルフィの出場には、色々考えさせられる。

 まず、ミルフィはカロスクイーンを目指しているのか否か。
 ポカロンは開催地によってテーマパフォーマンス(1次審査)が異なっており、ここフウジョ大会は、今後の展開からも、事前にポフレ作りだと公表されていた可能性が高い。
 そうするとミルフィは、“ポフレの出来栄えを競う”目的で、ポカロンに参加したとも考えられるのだ。
 だとするとフリーパフォーマンス(2次審査)はオマケなのか……。その答えは、後半で明かされることとなる。

  ミルフィ 「ふ〜ん。髪切ったのね」
  セレナ  「なによ……?」
  ミルフィ 「なにかあったの? サトシに振られちゃったとか?」

 いきなり煽って来ましたミルフィ。
 髪切ったことへのツッコミは、ロケット団、ティエルノに続いて3回目。うち2回で失恋を持ち出されたのだから、たまったもんじゃない。

  セレナ  「なっ……なに言ってるのぉ!?」 チラッ
  サトシ  「ん?」
  ピカ  「ぴぃかぁ〜?」
 

 そして当の本人は全く気付いていない様子。鈍感とはこれほどまでに恐ろしいものなのか。

  セレナ  「とにかく! 私もこの大会に向けて準備はバッチリ。この前のポフレコンテストのようにはいかないんだから!」
  ミルフィ 「それは私も一緒よ。セレナ、今度こそあなたと決着をつけるわ! そして……(サトシとも急接近しちゃおっかな?)」

  セレナ  「えぇっ……!?」
  ミルフィ 「ぅっふふ。また後でねっ!」

 ミルフィこれ完全にセレナで遊んでますわ。
 セレナみたいな純粋で素直な子は、いじり甲斐があるんだろうなぁ。

  サトシ 「ミルフィも やる気マンマンだなぁ」
  セレナ 「私も負けないもんっ!」
  サトシ 「おぅ! その意気だセレナ!」

 ここのセレナ凄く可愛かった。
 ……のだが、それ以上に注目せざるを得ないのが、このユリーカの顔である。

  ユリーカ 「サトシ鈍〜い」
  シトロン 「ユリーカ、どうかしました?」
  ユリーカ 「お兄ちゃんも鈍〜い」
  シトロン 「えっ?」

 ……改めて、この顔である。

 ユリーカ……気付いたのか!?
 ミルフィが何を言ったのかは聞こえていなかったはずだが、おそらく前後の感じ……と言うか、ミルフィの耳打ちで真っ赤になったセレナを見て、恐らくこの子は察したのだろう。
 そして、サトシがミルフィのやる気を認めた発言の後、負けじとセレナも“負けないもん”発言で、確信したのだろう。

 セレナがサトシに好意を抱いていることに。

 と言っても、小さなユリーカが、どこまで本気でセレナの恋愛沙汰を考えているかは分からない。
 ただただ、純粋にセレナがサトシを好きだと察した程度なのだろう。

 しかしこれ、実は相当な意味を持つ。
 と言うのも、アニポケXY編は、これまでの流れを見ても、一つの設定に関するネタを、脚本家さん達で共有している可能性が高い。まぁ当然と言えば当然だが、即ち、各脚本家さんが定めた設定が、そのままXY編の重要設定に成り得ると言うことだ。

 で、重要設定に成り得ると言うことは、当然、はっちゃけた設定ならストップがかかるはずである。
 今回のユリーカの発言は、そんなチェックを潜り抜けた訳で、今後、ユリーカは“セレナの恋心に気付いている”と言う設定が付け加えられたと考えて良いだろう。

 もともとユリーカは、第7話で察しているような節があったし、旅の中でも、テントの中などでは女の子同士一緒に居ることが多い。セレナの恋心に、薄々気づいていたのではないだろうか。
 そしてそれが今、確信に変わった……。

 こう考えると、今後、ユリーカがセレナの後押しする、もしくはからかう、はたまたサトシにアピールすると言う展開が、訪れるかもしれない……。
 いや、訪れた方が面白い、うん。


 さて、トライポカロン・フウジョ大会が始まった。

  ピエール 「ポケモンをこよなく愛するカロスの皆様、乙女の祭典、トライポカロンルーキークラス、フウジョ大会が、優雅に華麗に始まります!」
  ピエール 「私は、バラの香りと乙女の笑顔が大好きな、愛の夢先案内人、ムッシュ・ピッエエェェェル!」
  ピエール 「今日もまた、乙女たちの憧れ、カロスクイーンを目指すパフォーマーたちのトレビアァァァンな戦いが繰り広げられます!」

 相変わらず変なテンションの司会は置いといて、このポカロンの様子は全国中継されているようで、多くの面子が、その行方を見守っていた。

 それは、セレナがこれまでに出会った仲間たち、セレナを支えてくれている人々。
 2度目の挑戦、リベンジを誓うセレナを、たくさんの人が応援してくれているのだ。


 さて、テーマパフォーマンスはポフレ作り。今回の審査は前回とは違い、審査員が居るらしい。
 ポフレマスターのモナークポケモンソムリエのソルト、ポケモン評論家のデカンタと、そのポケモンたち。
 とりあえずカロスでポケモンソムリエの名が聞けるとは思わなかった。

  ユリーカ 「モナークさんキープ。お兄ちゃんをシルブプレー」
  シトロン 「ユリーカそれはいいって!」

 ユリーカ……そのシルブプレシステム、2回目アリなのか。
 考えてみると、モナークもミルフィと同じく、約1年2か月ぶりの登場だった。


 テーマパフォーマンスは順調に進んで行く。
 ミルフィのペロリームが嗅覚を活かして新鮮なミルクを選んだり、ムサシのニャースが審査員のポケモンを買収……もとい好みの味を聞き出していたりと、ポケモンの特徴を活かしたポフレ作りが行われる。
 真のパフォーマーになるには、華やかさだけでなく、ポケモンの特徴を知り、そのポケモンも、手先の器用さ、繊細さが必要になると言うことか。

 もう間もなく、セレナの番がまわってくる。
 ミルフィが堂々と2次審査進出を決めたことで、若干焦りを見せたセレナ。

  セレナ  「ミルフィ、やっぱりポフレ上手だな……」
  ヤンチャム 「ちゃぁむ!」
  テールナー 「てっなぁ!」

 けれど、テールナーヤンチャムが励ました。
 他人のことは気にするな、これまでいっぱい練習してきたじゃない。そう言いたいのだろうか。

  セレナ 「……うん。負けない!」

 それを聞き、セレナは すぐに思い直す。
 こういった不安な時に自分を支えてくれる存在と言うのは、まさしく“ポケモンと一緒に目指す夢”に相応しい。

 そしていよいよ、セレナの番がまわってきた。


 超満員の会場、ここで使ったかと突っ込みたくなるCG。みなの注目が集まる舞台に立つことの緊張、重圧。
 開始前は大丈夫そうだったセレナも、やはり実際に舞台に立つと、それらが込み上げて来てしまったようだ。


  セレナ (大丈夫。自信を持って。この日のために、何度も練習したじゃない)

 それは、フウジョ大会に至るまで、アニメ内では全くと言って良いほど描かれていなかったセレナの練習風景。
 ポケモンセンターのキッチンを借りたのだろう、そこでテールナーヤンチャムとともに、パフォーマンスで通用するポフレを、セレナは必死に研究していた。
 そんな彼女の支えになったのは、旅の仲間たち。

  

 ……回想のぼやかし効果でサトシ以外が背景と化してるが、恐らくセレナの中ではサトシが中心なのだろう。
 サトシはピカチュウたちと一緒に、セレナのポフレにかぶりつく。ポケモン用だと何度も言ってるのに。

  ― サトシ 『セレナ最高だぜっ』

  


  ― セレナ 『あはっ……♪』

  


  ― サトシ 『はははっ!』

  



  セレナ (支えてくれたみんなのためにも、最高のポフレを作るわ!)

 いや、ほとんどサトシだったんですがそれは……。
 こういった回想、不安な時に思い浮かぶ人物ほど、セレナが本当に必要としている存在なのだろう。
 それは、単なるサトシへの好意だけではなく、支えてくれることへの喜び、感謝が現れているのではないだろうか。


  ピエール 「それでは、ポフレ作り、スタート!」

 セレナのポフレ作りが始まった。
 ヤンチャムは材料をかき混ぜ、テールナーはオーブンの調整をし、セレナは抜群のコンビネーションでポフレを作り上げていく。
 デコレーションもバッチリ決まり、いよいよ審査開始だ。


 結果に不安そうなセレナを励ましたのは、やはり、テールナーヤンチャムだ。
 2匹ともセレナの手を取り、大丈夫だよと言わんばかりに笑顔を見せる。

  セレナ 「……そうね。やれるだけのことはやったもの!」


 審査員の前に並んだポフレは、3人とも最高の出来栄えだった。
 たまたまセレナが組み込まれたチームにセンスのある者が固まってしまったのだろう。

  ソルト  「おぉぉぉぉ! これは、色、形、香り、どれも素晴らしい!」
  モナーク  「本当に優しい香り。どのポフレもポケモンに対する愛情が込められていますね」
  デカンタ 「これは……とても難しい選択ねぇ」

 客席のサトシたちも、審査結果を静かに待つ……が、その表情はドキドキだ。
 唯一サトシだけは――きっとセレナの実力を信じていたのだろう。表情を変えず、セレナの結果を見守っていた。
 セレナからサトシへの好意アピールは多々あれど、その逆、サトシからセレナへの信頼アピールは、こうした紳士的な振る舞いが多い気がする。サトシ君、とっても大人になりました……。


 審査結果が出たようだ。
 2次審査に進むのは……スポットライトが勝者を照らそうと もったいぶる。
 ところで、このスカートは旧服装かな?


  ピエール 「この組の通過者は……………パフォーマー……セレナぁ! おめふでとぅー!」

  セレナ 「わぁ……やったぁぁぁ!」


 見事通過!
 予告段階でテーマパフォーマンスは通過と書かれていたが、そんな野暮なことはどうでもいい。セレナにとって、1次審査通過でひとまずのリベンジが果たせたことになる。

 各地で見守っていた面子たちも、セレナの通過に喜んでいた。
 サキはサイホーンに抱き付き、サナは飛び跳ね、ティエルノはガッツポーズで笑い、カロスクイーンという立場のエルも喜び、問題はプラターヌである。

  プラターヌ 「マーベラス……うぉぉっ!」

 ドサクサに紛れて助手に抱き付こうとするな!
 第28話(米村脚本)で見せた“ミナミちゃん口説き事件”以来久々に、プラターヌを軽蔑の目で見ることがあろうとは思わなかった。なんか普段から助手にチョッカイ出してそうだな、プラターヌ……。
 あとシャツが青ならソックスも青にしようよプラターヌ……。


 セレナの作ったポフレは、あらためて見ても美味しそうだし、造形も◎。良い香りは観客席まで漂い、とろけるピカチュウたちと、食わせろと暴れるハリマロン

  シトロン  「はぁ〜緊張しましたね……」
  ハリマロン  「りんまぁりぃぃぃぃりまぁぁぁぁぁ!」
  サトシ   「終わったら、またセレナに作って貰おう。オレも食べたくなってきた!」
  ハリマロン  「りんまぁ」
  ピカチュウ 「ぴっかぁ!」
  デデンネ 「でねぇ!」

 いやだからポケモン用のお菓子だって……。


  ミルフィ 「ふふっ……やるじゃない」

 選手控室で呟くミルフィ。彼女もまた、密かにセレナを応援していたのろう。
 ミルフィはセレナのライバルポジションに居ながら、煽りこそするものの、根は良い子なので非常に好感が持てる。


 さて、小休憩を挟み、いよいよ二次審査、フリーパフォーマンス。
 今回のフリーパフォーマンス参加者は5名。ここではじめて、今回のポカロン出場者が15人であったことが判明。……こんな少人数でポカロン界は大丈夫なのか?

 例の振袖に着替えたセレナ。
 テールナーも着物風の衣装を身に着け、ヤンチャムは裸ながら、誓いの樹イベントでセレナに貰ったサングラスを装着。
 オスのヤンチャムは おめかしが苦手なのかな? そんななか選んだ唯一のコスチュームがセレナから貰ったサングラスと考えると、なかなか可愛い奴だ。

 係員から声がかかり、舞台裏へと進むセレナ。
 悔いの残らないようにと、最後までテールナーヤンチャムとスキンシップを図るセレナに、緊張の表情は見られない。きっと1次審査を突破し、自信が付いたのだろう。

 しかし、それでよそ見をしていたセレナは、先に2次審査を終えて逆から歩いてきたムサシに気付かず……。

  ムサシ 「邪魔よ」
  セレナ 「ぁっ……!?」

  セレナ 「ぅぅっ……」
  ムサシ 「あーらごめんなさーい気付きませんでしたわー」

 いや思いっきり「邪魔」って言ったやん!
 そんな態度にテールナーヤンチャムは激怒。今にも飛びかからんとする表情だが、それを制止したのはセレナだった。

  セレナ 「いいのよ、2人とも。……どうも、すみませんでした」

 ムサシ頭を下げるセレナ。
 たとえムサシに悪意があったとしても、セレナの方もよそ見をしていた訳で、きちんと頭を下げるセレナは、人間が出来ていると言える。

  セレナ 「大丈夫よ、怪我はしてないから」

 心配するテールナーヤンチャムに、そう言ったセレナ。
 なかなか痛そうにしていたので、てっきり怪我したのかと思ったが、ひとまず一安心だ。

 しかし……。

  セレナ 「スカートがっ……!?」



 一方舞台では、ミルフィが2次審査の真っただ中。
 余談ながら、舞台裏と舞台上の展開ごとのBGMの切り替えが、非常に上手い。こういった細かな面にも気を遣っていると、俄然、話全体の質も上がる。

 ペロリームニャオニクスとの抜群のチームワークを見せるミルフィに、サトシたちも思わず見とれている。

  サトシ  「ミルフィも凄いな!」
  シトロン 「チームワークもバッチリですね!」
  ユリーカ 「セレナたちだってチームワークなら負けてないよ!」
  サトシ  「勿論さ。あれだけ頑張ってたんだから!」

 たとえ凄みのある演技を見せられても、セレナの練習を認め、セレナを信じるサトシのイケメンっぷりは半端ない。
 こういう発言こそ、セレナに聞かせてあげたいと切に思う。


 ……けれど、そのセレナは今、危機に瀕していた。

  セレナ 「わたし……わたしっ……またっ……」

 転んだことによる衣装の乱れ、それによる失敗――。
 セレナの中で、それは、前回のポカロンフォッコが失敗したシーンと重なった。

 思わず泣き出しそうになるセレナだが、今回は違う。泣いている暇はない。すぐに気持ちを切り替えた。

  セレナ 「そうだよね。サトシなら最後まで諦めない。私だって、絶対に諦めないっ!」

 手に力を込めて言ったセレナ。
 それは、テールナーヤンチャムを心配させまいとする気持ちもあるだろうが、自分に言い聞かせる意味合いもあるのだろう。

 そして、この状況でサトシの言葉を思いだすと言うのも、またセレナらしい。
 その言葉をサトシから貰ったのは約21年間もとい、アニポケ内描写から正確に考えると、6年ほど前か。
 1次審査開始前もそうだが、不安な時に思い浮かぶ人物ほど、セレナが本当に必要としている存在と言えよう。
 それはやはり、単なるサトシへの好意だけではなく、支えてくれることへの喜び、感謝が現れているのだと裏付けされる。そしてもう一つ、サトシみたいな諦めない心を持ちたいと、一種の憧れのようなものを、セレナは感じているのかもしれない。



 舞台では、ミルフィの演技が終わった。

  ミルフィ 「(さぁ……どお!?)」

 汗をかき、息を切らせながらフィニッシュのポーズを取るミルフィ。本気でやり切ったと言う表れだ。こういった本気の姿は、純粋に美しいと感じてしまう。

 これを見て、冒頭で考えた“ミルフィのポカロンに対する想い”がまとまった。
 ミルフィは決して“ポフレのためだけ”に参加したのではない。演技の構成、遣り遂げた表情などを見るに、本気でポカロンに撃ち込んでいることは明白だった。
 きっとミルフィは、第26話で別れた後、色々あって、ポカロンの道に足を踏み入れたのだろう。
 そしてピエールの紹介内容から、今回がデビュー戦。デビュー戦を華々しく飾り、トライポカロンと言うツールを通し、ポフレだけでない輝きを目指そうと、ミルフィは思ったのだと感じられた。


 そんな裏で、セレナは破れた衣装の対処を急ぐ。
 ハサミが描写なんとも意味深。思えば、前回のポカロンで、フォッコのリボンを切った時、翌朝、自分の髪を切った時、ともにハサミを使っていた。
 大きな失敗と、大きな決意。そして今回のハサミは……。



 2次審査ラストはセレナ。
 スカートの対処を終え、ギリギリ間に合ったようだ。

  ピエール 「皆様、盛大な拍手でお出迎え下さい。パフォーマー、セレナの登場です!」
 
 舞台から せり上がって登場したセレナは、テールナーヤンチャムと共に、大きくジャンプ。先ほどまでトラブルを抱えていたとは思えない、良い笑顔だ。

 ……でもこれ客席からだと際どくね?


 着地してお辞儀するセレナは、音楽に合わせて演技スタート。
 そこで、サトシたちがセレナの変化に気付く。

  ユリーカ 「衣装が変わってるよ」
  シトロン 「どういうことでしょう……?」

 変わった部分の強調のため、スカート部分を映すカメラ。際どい。

 セレナはヤンチャムを抱え、放物線を描くように放り投げる。
 そしてヤンチャムは、“あくのはどう”的な何かを細やかに噴出し、華麗に舞うセレナとテールナーを輝かせた。

 ……これは、第64話で練習していた演技じゃないか。
 フォッコは進化してしまったので別の演技をせざるを得ないが、ステージ上で練習の成果が表れていると言うのは、なんとも綺麗な展開だ。数少ない練習描写を きちんと形にして組み込む脚本は、非常に好感が持てる。そう言えば、第64話も面出脚本だったか。

 そして、セレナとテールナーの舞いも、なかなか考えられてるなと感じた。
 まず、セレナはダンスが得意。それに振袖を絡めれば、このように美しく舞うのはお手の物だろう。セレナの特技を活かした形なのだ。
 次に、共に舞うテールナーの存在。ヤンチャムのように、唯一の練習シーンの成果は出せないものの、進化して人型となったおかげで、セレナと組んで一緒に舞うことが出来る。ポケモンパフォーマーの連携を見せる、この上ない演技だ。テールナーが着物風の衣装を着ているのも、このためだろう。
 また、テールナーは舞うために衣装を着ているのであれば、ヤンチャムがサングラスだけと言うのも納得できる。要するにヤンチャムは演出家、セレナとテールナーを陰で支える重要なポジションに就いていると言うことだ。

 ……と思ったが、普通にヤンチャムも演技していると言う事実。これは、テールナーをメインに魅せると言う解釈でいいのだろうか?


 テールナーがステージ上に火柱を発生させ、その中心でセレナが舞う。際どいったらありゃしない。 

 ヤンチャムの“ストーンエッジ”を、テールナーは炎を用いて粉砕し、その輝きを客席へと届ける。単に美しさを魅せるだけでなく、時にはこういった迫力も必要だ。ポケモンコンテストにも通じる演技と言えよう。

 そしてラストスパートに入る。
 テールナーと舞っていたセレナだが、ヤンチャムも忘れてはいない。
 ヤンチャムの小柄な体を活かし、セレナの股下を潜ると、ストリートダンスのようなステップを踏むと共に“あくのはどう”を繰り出した。


 ▲ これ見えてますわ。

 テールナーの“かえんほうしゃ”も加わり、ワザだけで、さながら衛星のような描写を作り出す。そして……。

  セレナ 「フィニーッシュ!」


 とうとうセレナは、やり遂げた。

  サトシ  「良いぞーセレナー!」
  シトロン 「練習の成果が出てます!」
  ユリーカ 「みんな綺麗だったー!」

 演技を成し遂げたセレナの笑顔!
 前回は自身のミスで1次審査敗退、いや、それ以上の失敗をしてしまったセレナなだけあって、2次審査に進み、その演技を完璧に やり遂げたことは、このうえなく嬉しいことだろう。
 テールナーヤンチャムの表情を見ても、それは明らかだ。


  ミルフィ 「さすがね……ふふっ」

 控室では、ミルフィもセレナの演技を評価していた。
 ミルフィにとってみれば、ポフレ作りこそレベルは高いが、フリーパフォーマンスの演技は、練習時期や出場経験から見ると、一応セレナの方が格上と言える。
 1次審査では、セレナがミルフィのポフレの凄さを認めていたが、それ対になるであろう描写だ。これは今後、ミルフィがセレナの大きなライバルになると見て間違いないだろう。


 演技は全て終了した。
 結果発表を前にステージ上に並ぶパフォーマーたちだが、これセレナよりミルフィの方が際どかった!


 優勝者の決定は、会場の観客たち。謎の技術の結晶であるポケリウムを使った投票だ。

  ピエール 「最も素晴らしいパフォーマンスをしたと思うパフォーマーと、同じカラーを灯して下さい。アン……ドゥ……トゥラァ!」

 まるで蛍のように舞い上がる、色とりどりの光。
 それらはステージ上のパフォーマーたちの胸元のキーへと集まっていく。

 みなその光を笑顔で受けるが、セレナだけは、浮かばれない表情をしていた。

  セレナ 「んっ……!」


 メェークルレースでサキに勝ち、晴れてパフォーマーとしての道に進んだセレナ。
 しかしそのデビュー戦は、あまりにも残酷な結果で終わってしまう。
 失敗との決別、そして新たなる決意を誓ったヒヨクの港。

 そんな今までのことが、セレナの脳裏に浮かんできたのだ。
 やれるだけのことはやった、失敗もしていない、全力を出し切った。
 だからこそ感じる不安と言うものがある。
 ここまで一生懸命やって、もし失敗したら……。一緒に練習してくれたテールナーヤンチャム。支えてくれたサトシたち。みなの想いを、踏みにじってしまうかもしれないのだ。


 けれどそれは、結局は無駄な心配で終わることになる。


  ピエール 「トライポカロン・フウジョ大会の優勝者が決まりました!」


  ピエール 「優勝は、パフォーマー、セレナぁ!」

  セレナ 「ぁぁっ……」


  サトシ  「ぃよっしゃぁ!」
  ユリーカ 「セレナー!」
  シトロン 「やりました! やりましたよぉ!」

  ヤンチャム 「やんちゃぁぁぁ!」
  テールナー 「てなななぁぁぁ!」
 
  セレナ  「やった……私たち、優勝したんだぁ!」


 セレナは見事、優勝を飾ったのだ。

 前回の失敗の経験。これまでの練習。スカートが破れるトラブルに打ち勝つ強さ。そして、サトシをはじめ、支えてくれた多くの仲間たち。
 その全ての想いが一つとなって、セレナを優勝に導いたのだ。



  ミルフィ 「……ふっ」

 優勝を逃して悲しそうな表情のミルフィも、涙を流して喜ぶセレナを見て、ふっと笑顔を見せた。
 全力で挑んだ結果、セレナの勝利を認めたのだろう。
 本当にミルフィの根の良さには好感が持てる。今後もミルフィは、良いライバルとなるのだろう。


  ピエール 「優勝したパフォーマー、セレナに、プリンセスキーを贈呈です。初めてのプリンセスキー、おめでとうございます」
  セレナ  「ありがとうございます! わぁっ……」

 ピエールからプリンセスキーを受け取ったセレナ。
 彼女の表情は、喜びに満ち溢れていた。

  セレナ  「ジャジャーン! プリンセスキー、ゲットよっ!」
  テールナー 「てってなぁ!」
  ヤンチャム 「やんちゃぁ!」


  ピエール 「カロスクイーンを目指し、第一歩を踏み出したパフォーマー、セレナに、祝福を!」

 テレビやパソコンで中継を見守っていた面子も、みな、セレナの優勝に喜んだ。
 エルは歓声を上げ、ティエルノは舞い上がり、サナは闘志を燃やし、サキは自分の娘を流石だと笑顔(ずっと外で見てたのか?)。プラターヌは……特に何もしなかった。
 ところで、トロバ喋ったか? スタッフロールには登場していたものの、全くと言って良いほど聞き取れなかったんだが……(トロバに似つかぬ可愛らしい笑い声なら聞こえた)。


 とにかくおめでとう、セレナ。
 こんなにも沢山の人に支えられ、大きな大きな第一歩を踏み出すことが出来た喜びは、夢を目指す女の子にしか分からないことだろう。

 しかし、挑戦はまだ始まったばかり。
 あと2つプリンセスキーを集め、目指すはマスタークラスのトライポカロン
 今後もさらに腕を磨き、悔いの無いよう、美しい夢を追い求めてほしい次第だ。



* ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ――― * ――― *


  ユリーカ 「えぇっ!? 衣装破れちゃったんだ」

 夕日に染まる会場外で、ユリーカが声を上げた。

  セレナ  「そう。だったら いっそと思って、裾を切ってみたの」
  シトロン 「凄い機転ですね。流石です!」
  セレナ  「でも……、せっかく貰った衣装を破っちゃって、マーシュさんには謝らないとね……」

 ここで、ようやく振袖の出所が判明した。
 やはりと言うか何と言うか、マーシュに貰ったものだったらしい。ファッションショーの協力のお礼ということだろうか。……ってことは、ユリーカも貰っているのだろうか。
 どうやって振袖を手に入れたか、有耶無耶のまま終わるのではないかと心配したが、最後に明かしてくれて、一安心だ。

 それにしても、敗れた部分を違和感なく、デザインを持って切り取るとは、セレナの機転はなかなかだ。
 あの緊張の中、本番まで時間も無かったであろうに。
 しかしそれは、刺繍が得意と言う、セレナの特技が活かされた形だ。ダンスと合わせ、セレナの特技が2つも絡んだポカロンとなった訳だが、その根底にあるのは、サトシの言葉、「最後まで諦めちゃダメだ」という精神だろう。
 こうやってまた一つ、セレナは成長を遂げたのだ。

  サトシ 「セレナ、すげぇ似合ってたぜ」


  セレナ 「ぁっ……ありがとう……」


 なんの前触れも無しに、サトシからこんな言葉が出たことに驚きだが、彼なりの祝福の言葉なのだろう。もしくは、衣装が破れてしまったことへのフォローなのか。
 勿論、セレナの気持ちになんて気付いていない訳で、無意識のうちに、そんな言葉が出たのだと推測できる。いやぁ、鈍感って時にコワイ。
 第60話では、セレナの新衣装を「似合ってるよ」と褒めたことに驚きだったが、まさかその上、「“すげぇ”似合ってるよ」が発せられるとは……。

 そんなセレナも、突然のことに驚いたのか恥ずかしいのか、少し控えめな喜びだ。
 人間誰しも、突然の嬉しさには気持ちが付いてこないんだろうな。 


  ミルフィ 「すっげぇ似合ってたぜ?」 (低音)
  セレナ  「うゎっ……ミルフィ!?」


 ※ ポケモンアニメです。

 ここでまさかのミルフィの煽りである。
 サトシの声マネまでして、完全にセレナで遊んでいるといった感じだ。

  ミルフィ 「今日は負けたけど、次は私が勝つわよ。待ってなさい……セレナっ」
  セレナ  「私も……負けないよっ!」

 もぉ本当にミルフィ良い子!
 ポフレコンテストの時とは違い、こう、セレナを小バカにする態度が無くなったためか、凄い良い子に見える。
 度重なるサトシ絡みの煽りは、むしろ良い意味でからかっているのだろう。現に、セレナのやる気をアップさせているのだから。


  ミルフィ (あっちの勝負もまだまだ諦めないからっ)


  セレナ  「えっ!?!?!?」


 最後の最後まで煽るねぇ君は!

  ミルフィ 「サトシ、またねっ」
  サトシ  「あぁ。ミルフィも頑張れよ!」
  セレナ  「えぇっ!?」
  ミルフィ 「うふっ……もっちろん!」
  セレナ  「ミルフィ!?」
  ミルフィ 「じゃあねっ!」
  セレナ  「もぉ……」

 最後だと思ったら、最後の最後の最後まで煽るねぇミルフィ!

 しかしながら、こうも嫌みのない煽りと言うのも、なかなか気持ちの良いものだ。セレナには堪ったもんじゃないだろうが。

 この先、最低2回は行われるであろうトライポカロン
 果たして次は、どんなドラマが待ち受けているのだろうか。

 セレナに加え、サナ、ムサシ、そしてミルフィ。
 ポケモンバトルだけじゃない、乙女を取り巻く戦いに、今後も期待大だ。


 ……ところで、ヤシオさんは?


● 総括
 念願のセレナ初優勝、ミルフィの再登場、そしてサービス全開サトセレ要素。そんな、セレナの内面にも迫った回だったが、ポケモンの特徴や衣装関連など、ポカロンと比べれば小さな扱いでも仕方ない部分まで丁寧に描かれており、決してサービスだけでない脚本には、非常に好感が持てた。
 ミルフィの声質にも特段違和感は覚えなかったし、今回はXY編の一つの区切りとして相応しい、なかなか質の高いストーリーだった。
 しかし一番特筆すべき部分は他でもない、ユリーカであった……(驚)


● 次回ひとこと予告
 → 不良っぽい奴等に挑んでいくサトシご一行、現実なら実に危険である。


● おまけ1
 フウジョタウン到着。全く無駄のない進行。


● おまけ2
 そんな無駄のない進行のおかげで、最後のジム、エイセツシティまで残りの街は3つしかない。
 そうなると、トライポカロンを行う街の選択肢が狭まり……と言うか、これ以上敗退できないという制約が生じてしまう。
 今のところアニメオリジナルな街で大きなイベントは行われていないため、ポカロンも既存の街で行うだろうと予測できるが、どの街を使うのだろうか。
 上の図で“緑色の街”はジムが無いことから、レンリは確実、その後、キナン、メイスイ辺りも取り込むのだろうか……?


● おまけ3
 アニポケ公式ページの今後のストーリー更新。真夏の雪山回で期待度が上がる挿絵を使ってくれちゃいましたねぇ(笑)
 【 http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/pokemon_xy/trailer/


● おまけ4
 一方で、CMで流れたポケモン映画映像を見るに、セレナの水着への期待度は下がってしまった訳で。