ポケモンXY感想−81話目

  第81話 「時をかけるサトシ! ロトムの願い!!」


 トライポカロンも無事に終わり、お次はいよいよサトシのジム戦。
 ヒャッコクシティに向けて旅を続けるサトシたちだったが、どうやら次の街までは、少し距離があるようだ。

  サトシ  「すっかり陽が暮れちゃったなぁ」
  ユリーカ 「やったぁ野宿! またポケモンモノマネやろうねっ!」
  セレナ  「いいわよっ。でも、今日はシャワー浴びたかったなぁ……」

 ポケモンモノマネ、まだやってたんかい。
 そしてシャワー浴びたいと言う、地味〜に女の子らしいセレナの発言。これまでのヒロインは、野宿に際してそんなこと言っていなかった気がするし、やはりセレナはスタッフからも、特別女の子扱いされているのだろうか。
 (昔はカスミの入浴シーンとか普通にあったんだけどなぁ)


 セレナがナビで調べたところ、この先にホテルがあるらしい。
 旅先で、間もなく夜という段階でホテルを見つけた時の喜びと言うのは大きい。これは、計画立てずの行き当たりばったり旅行をしたことのある方なら共感できるはず。
 かくいう私も経験済み。ホテル(と言うか寝れる場所)を確保できた時の安心感と言ったら半端ない。


 ……で、着いたホテルがこちらになります。

 見るからに怪しいんですが。

 ここぞ原作で言う“荒れ果てホテル”。
 ゲームでは完全廃墟と化してたが、アニメ内では一応営業中。
 しかしロビーは朽ち果てていると言っても過言では無いほど汚く、やる気あんのかと突っ込みたくなる。

 けれど、フロントマンに案内されて通された部屋は、割かし綺麗にされていた。
 やはり人様を泊める場所ともなれば、流石に清掃は行き届いているようだ。

 ……と思ったけどコレ壁に亀裂入ってない?


 で、早速サトシはバトルしないかと持ち出した。
 どうやらサトシ、フロントに飾ってあった写真の中に、バトルフィールドを見つけていたらしい。こういう所には目が行くサトシは、やはりサトシらしい。

 しかし、フロントがアレならフィールドも期待できない。
 案の定、バトルフィールドは「チョー汚い!」だった。

 汚いと言うか、これ逆の意味で荒れてるぞ。
 フロントや外観は自然に朽ちているような感覚だったが、ここは人為的に荒らされている。まぁそれもそのはず、原作でも荒れ果てホテルはギャング系のトレーナーが潜んでおり、こういった形で原作要素を取り込んで来たのかと考えれば、なかなか上手い落とし込みをしたものである。

 で、そんなギャングの溜まり場に相応しく、そこでバトルしていたのは、いかにもアレな人物、マントル
 それがホテルのオーナーって言うんだから たまったもんじゃない。ある意味、このホテルの荒廃具合も頷ける。
 さらに彼は、バトル相手のオッサンとポケモンを賭けていたようで、ワルビアルで勝利するや否や、オッサンのゴロンダを奪ってしまったのだ。それでもオーナーか!?

 それを見て黙っちゃいられないのがサトシ。マントルの元へ駆け寄り、ゴロンダを返すように直談判。
 しかし、それでマントルの心が動くようなら、ここまで荒廃はしないだろう。
 そもそもどんな背景で賭けバトルが始まったのかは知らないが、両者で合意の元なら、負けたからやっぱり返してくれは通用しない。大人の厳しさを垣間見せてくれたような気が……しないでもない。

 そしてマントルは、ピカチュウとのバトルを申し出る。
 そこでサトシが勝てば、ゴロンダは返す。しかし負ければ、ピカチュウは貰うと言う。……これ考えてみると、マントル自身には全く関係無い条件だ。

 昔のサトシなら「売られたバトルは買うっきゃない!」、「正義は勝つのさ!」ってな具合でバトルに挑むところだろうが、ここはXY編のサトシ。賭けバトルなんぞやらんと断言する。
 同じ賭けバトルでも、アリー姫とはバトルしたところを見るに、“本当に(社会的に)ヤバそうな相手”とは まともに相手をしないということか。
 とにかく、マントルの口車に乗せられないサトシ君は、傍から見ても格好良い。


 ……しかし、それで良しとはされないようだ。

 取り巻きに囲まれ、強制的に賭けバトルに持ち込まれそうになる。
 とりあえずピカチュウの電撃で何とかなりそうだが、相手は6人、セレナやユリーカが居る手前、下手に動けないのだろう。


 すると突然、サトシたちを旋風が包み込む。
 その正体は1匹のロトムで、どうやらサトシたちを助けようとしているようだ。

 取り巻きたちの顔には紙切れが貼りつき、その隙に倉庫部屋へと逃げ込んだサトシたち。その倉庫に洗濯機や冷蔵庫があるもんだから、この先の展開が読める。

 で、実はロトム、サトシたちがホテルに着いてから ずっと傍に居たようで、何やらサトシたちに助けを求めている様子だった。
 しかし当然、ロトムの言葉は分からない。ニャースでも居れば話は別だが、今回は久々にロケット団は登場しない。

 そこでロトムの取った行動は……。

 テレビに入った!
 映像流した!
 便利!


 簡単に説明すると、10年前、ヨルトンと言うオーナーが、このホテルをオープンさせた。
 しかしその記念パーティー中、先ほどのマントルたちが乱入し、そのホテルの権利を賭けてバトルしようと言いだした。
 勿論断ったヨルトンだが、なら一般客とバトルしようと半ば脅しにも見えるマントルの言動、そして煽りに、ヨルトンはバトルを受けてしまう。
 で、このロトムはヨルトンのポケモンで、マントルワルビアルとバトルを行おうとするも逃げ出してしまい、ヨルトンは試合放棄と見なされて負けてしまったのだ。
 そのせいでオーナーはマントルに、ヨルトンはフロント係に降格と言う最悪な展開になってしまったものの、ロトムは逃げ出したことを未だに謝れていないとのことだった。10年も謝れてなかったんかい。

 テレビの中で泣き出すロトムの気持ちも分かる気がするが、10年もの間、ヨルトンから逃げていてしまっては、どんどん謝りにくくなってしまう。時効すら成立しそうなレベルである。

 ロトムの願いとは……、ヨルトンへの謝罪に協力して欲しい――。そんなところだろう。

 もちろん協力を申し出るサトシたちだが、そもそも10年前のこと。
 タイムマシンでもあれば話は別なのだが……。


  ロトム 「あるで」


 ロトムに連れられ、サトシたちはエレベーターに乗り込んだ。そしてロトムは、エレベーターの操作盤の中に入り込む。
 すると、レトロチックな階数表示機に、突如マイナスのコマが現れ……。


 タイムスリップしちまったよ……。
 タイトル的にサトシだけがタイムスリップするのかと思いきや、意外と全員で時を超えるらしい。

 表示は“−10”を指し、地下10階……と捉えるべきなのだろうが、これ確実に10年前に来てますわ。
 “セレビィ時を超えた遭遇”、AG編“時を超えるハルカ”と比べると、10年前と言うのは何とも細やかなタイムスリップである。

 この時点では、サトシたちはタイムスリップに気付いていない。
 しかし、例のバトルフィールドに足を運んでみると、先ほどロトムが映像で見せてくれたオープン記念パーティーが行われてるのだから、タイムスリップしたのだと信じずにはいられない。

 そして、ロトムの映像通りだとすれば……。

  マントル 「このホテルの権利を賭けて、オレとバトルしねぇか?」

 やはり、当時のマントルが登場した。
 オーナーのヨルトンは断るが、一般客に手を出そうとするマントルに挑発され、バトルを受けてしまう。

 マントルワルビアルを繰り出し、対するヨルトンのロトムは……ビビッて逃げ出した。

 ……え? 逃げちゃって良いの!?
 てっきり逃げ出す前に思い留まらせてバトルするのかと思いきや、どうやら違ったようだ。
 考えてみると、ロトムの願いは“ヨルトンに謝りたい”。ならば逃げ出さないと辻褄が合わない訳で、ある意味、当然の流れのようだ。……タイムスリップの呆気に取られてロトムに逃げられたと見た方が自然だが。

 しかしこのままでは根本的解決に至らない。
 何せ、仮にこの後ロトムが謝れたとしても、試合放棄でヨルトンの負けは確定してしまうのだから。

 しかしここで、我らのサトシが声を上げる。

  サトシ 「まだ正式にバトルは始まっていないから、不戦勝にはならないはずです!」


 ……サトシとは思えぬ理論的解釈。
 確かに、マントルもヨルトンも、フィールドのトレーナーブースに入っておらず、その状態では、正式にバトルが始まったとは言い難い。
 幾戦もの公式バトルを経験してきたサトシだからこそ、この解釈に気付いたのだろう。

 そしてサトシは、5分だけ待ってくれるようマントルに頼む。
 ロトムを連れ戻し、加えて、ロトムがヨルトンに謝る時間を作ってあげたのだ。

 釈然としないマントルだが、一般客たちも、サトシの解釈を後押ししてくれた。
 あの状況では不戦勝には当たらない、まだバトルは始まっていなかった、5分くらい待ってあげろ――と。

 この状況に、マントルは渋々サトシの要望を飲むことに。打たれ弱い悪者って悲しい気もするが……。


 サトシたちは、ヨルトンを連れて、隣の倉庫部屋へと向かった。
 当然、サトシたちを不思議がるヨルトンだが、そんなヨルトンの言葉を遮り、サトシはロトムを呼び出した。
 ここで自己紹介しそうなものだが、5分と言う限られた時間を考えるに、それは後回しにしたのだろう。加えて、早くロトムの願いを叶えてあげたいという意識が働いたのだろうか。

 コンセントから恐る恐る登場したロトム
 しかし、ヨルトンが怒ることは無かった。たとえバトルで逃げ出しても、ロトムが居てくれることが何より一番だと……。
 そうだよね。バトルをしないトレーナーが居たっていいじゃない。もし現実世界にポケモンが居たら、私は確実に、そっちのタイプになると思う。


 これにて一件落着……って訳では無い。
 マントルとバトルしなければならず、それこそ、このホテルの権利が賭かっている一大事なのだから。

 しかし……、倉庫に家電がある時点で、もう展開は読めていた。



 バトル中フォルムチェンジ!

 ……バトル中にフィールドから抜け出すって、これこそ試合放棄にならないのか?


 とまぁ、反則スレスレのところでロトムが勝利。
 ヨルトンはマントルたちに、約束通り、大人しく出て行くように言い放つ。

 けれど、ならず者が黙って出ていく訳が無く、実力行使でホテルを乗っ取ろうと武器(イス)を取り出したのだ!

 相手はヤンキー、社会的に厄介な人物。さぁどうする……!?



 ですよねー。
 サトシ君、ピカチュウの電撃を浴びるより、一般人に電撃を喰らわせる方が多い今日この頃。

 今度こそ、一件落着となったのだ。
 そしてサトシたちは、最後まで名前を告げず、10年前の世界を後にした……。


 元の世界では、マントルたちがサトシたちを迎え入れてくれた。

 ……えぇ、だいたいそんな展開だと思ってましたよ。
 けれど、マントルたちはサトシたちのことを覚えていなかったのだろうか……?

 ほんの20分ほど前は荒れ果てていたバトルフィールドは、綺麗に飾り付けられ、オープン10周年記念パーティーの真っただ中だった。

 オーナーは、もちろんヨルトン。
 あの後、ヨルトンは無事にホテルのオーナーであり続け、10年間、このホテルを守って来たのだろう。

 彼のスピーチ曰く、今の自分があるのは、10年前、ピカチュウを連れた少年らに助けられたからだと――。

 サトシたちのタイムスリップによって、確実に、歴史が変わっていた訳だ。

 で、サトシたちの姿を見て驚くロトム。なんで驚くんや。
 ロトムに連れられて、サトシたちは飾られた写真を目にする。

 ……うん。タイムスリップした時の写真や。

 ヨルトンがサトシたちを恩人と思っているのなら、ロトムも同じように思っている……と言うのは分かる。
 10年前に助けてくれた人物が、10年後、全く同じ姿で現れたのだから、驚いたに決まってる。と言うより、成仏してない地縛霊か何かと思われる。


 ここでふと思ったのは……、マジでなんでロトム驚いたんや。
 
 本来の時間軸Aを考えると、荒れ果てホテル、サトシたちエレベーターに乗り込む、ロトムそれを操作する――となり、ロトムAも10年前にタイムスリップしていることになる。
 しかし、10年前ではロトムAは描かれず、10年前に元から居たロトムBのみの登場だった。

 ゴタゴタやって、サトシたちが再び戻ったのは、歴史が変わった、時間軸B。当然そこに居たのはロトムBになるのだが……ロトムA消えたぞ。

 普通に考えれば、サトシたちが10年前から戻った時点で、ロトムAも一緒にエレベーターから下りてこないと辻褄が合わない。

 そうなると、ロトムAはエレベーターをタイムマシン化しただけで、一緒にタイムスリップしていないことになる。けどそうすると、帰りのエレベーターは誰が操作したんだって話になって……。

 だとすると、サトシたちが最初にエレベーターに乗り込んだ時点で歴史の修正が決定され、ロトムAは無関係になったのか……。


 とりあえず出した結論は、アニメでその辺を考えるのは野暮と言うものだ。
 まぁとにかく、荒れ果てホテルのアニメアレンジとしては完成度の高い話だったと言えよう。


● 総括
 これぞ日常回! さも当然のようにタイムスリップして過去を変えてしまう様は、AG編の時を超えたハルカ、イーブイ誕生回を彷彿とさせる。
 現在の敵が歴史が変わったことで改心するというのは、お決まり展開ではあるが、原作要素である“荒れ果てホテル”をこういった形で活用したストーリーは、唸らずにはいられない。
 原作とアニメの繋がりを感じた、安定して見れる日常回だった。


● 次回ひとこと予告
 → またセレナのポケモン衣装が見れるぞおおおぉぉぉ!