ポケモンXY感想−51話目

第51話 「ルチャブルとダークルチャブル!」


 ヒヨクシティを目指すサトシ達。どうやら夕暮れ時になってもポケモンセンターに到着していない様子。
  ユリーカ 「ポケモンセンターまだなのぉ」
  セレナ 「この森を抜けると、あるはずよ」
  シトロン 「ユリーカ、もう少しだよ、頑張ろうねぇ」(深刻)
  ユリーカ 「はーい」
 なぜシトロンは、それほどまで切羽詰った声を出したのか……。

 もっとも、管理人からしてみれば、テントを持っている分際で何を慌てているんだと。
 自転車旅行中、19時の時点で、ホテルがある街まで残り60kmとかいう絶望を味わっている手前、サトシ達のこの状況が可愛く見える。
 余談ながら、その時は午前3時前にホテルに着きました。迷惑極まりねぇ!


 と、その時。ポケモンの悲鳴が聞こえた。……ドスい声だった。

 声の元へ行ってみると、“舞台の上で”、色違いのルチャブルが“衣装を着た”ブルーを襲っていた!
 ……疑う余地はあったのだが、いつも通り、サトシはピカチュウに“10万ボルト”を指示。
 で、タイミング悪く舞台の隅から登場したエルレイドが、その電撃に気を取られ、足を怪我してしまった。悲鳴が生々しいと言うか……これマノンの声か!? ……と思ったらハリさんだった。

 それに怒ったのか、ブルーがサトシに飛びかかる。仮にも妖精ポケモンが、この顔である。


 【参考】 ブルーユリーカ


 で、ブルーが襲い掛かったタイミングで、ピカチュウが放電。倒れるサトシに「大丈夫?」と近寄るが、断言する、ほとんどお前のせいだ。


 話はポケモンセンターに移る。
 どうやら先ほどのゴタゴタは、舞台の撮影だったらしい。……うん。誰が見てもそうだろう。
 カールと名乗る初老の男性は舞台の監督。“スーパーポケモンバトル”と言う、芝居のポケモンバトルを撮影しているようだ。
 それを妨害してしまったサトシたち。ここまで真剣に謝るサトシを見たのは、久々な気がする。それだけ大人になったと言うことか。


 治療が終わったエルレイドは、松葉杖をついて登場。ポケモンに松葉杖は初めて見た。人型ポケモンだからこそ出来る表現だし、しばらく安静にする必要がある、と視覚的に分かりやすい表現だ。
 そうなると当然、明日の芝居は不可能。残念そうに休演の判断を下すカール、再度謝るサトシ。ノーBGMで、暗い雰囲気が伝わってくる。

 そこでユリーカの鶴の一声。
 サトシのルチャブルが代わりにヒーローを務められないか提案したのだ。
 その話乗った! と、カールは意気揚々と新たな台本の制作に取り掛かった。

  セレナ 「ユリーカ、お手柄ね!」
  ユリーカ 「えへへっ!」
 相変わらず可愛いなぁおい。


 翌日。
 ルチャブルが芝居の稽古に加わるが……本気でバトルに取り組むルチャブルにとって、芝居のバトルは許せない様子。台本を無視して、カールの色違いルチャブル(以降、ダークルチャ)を攻撃。

  エルレイド 「あかん……」


 ▲ スマートなガチャピンに見えなくもない。


  シトロン 「負けず嫌いだからなぁ……」
  セレナ 「これはお芝居なのよー!」
  ユリーカ 「なんかユリーカ、お腹痛くなってきた……」
 ユリーカ、推薦の責任を感じるとは……。


 その後も、やはりルチャブルは やられっぱなしは不愉快なのか、台本を無視して反撃。そりゃダークルチャも怒りますわ。
 結果、ダークルチャは不機嫌そうに舞台から去って行った。なんか大物俳優もこんな反応しそうな気がする……。


 頭を冷やしていたのか、ルチャブルは川に石を投げ込んで しょぼくれていた。ルチャブルの意外な一面である。
 そりゃぁ……これまで森のチャンピオンとして君臨し、本気のバトルを繰り広げてきた訳で、お芝居の、言わば手加減バトルに、納得するはずがない。どちらかと言えば、そんなルチャブルの性格をくみ取れなかった、サトシに非があるように思う。
 そこでいくら「初めてだから仕方ない」と言われても、それは根本的に違う訳で……。


 一方のダークルチャは、木の上から飛び降り、受け身の練習をしていた。
 大物俳優なら、控室で怒りがおさまるまで休憩してそうなものを、ダークルチャの向上心、芝居への熱意は、見上げたものだ。

 そのダークルチャ、実はカロスの格闘大会でチャンピオンに輝いた過去を持っているらしい。カールはダークルチャのセコンド(介添人)。
 しかしある大会で、ダークルチャに怪我をさせてしまい、それ以来、本気でのバトルが出来なくなってしまったらしい。
 ここで、カールの会話から、怪我をしたのはダークルチャと判断したが、考えようによっては、相手選手に怪我をさせ、それ以来(怪我をさせてしまった責任から)本気でバトルできなくなった、とも取れる。
 しかしその後、「体の負担が少ないスーパーポケモンバトルへ転向」したと発したので、怪我をしたのはダークルチャで間違いないようだ。

 今では、スーパーポケモンバトルを素晴らしいものにしようと、プライドを持って、全力で取り組んでいるダークルチャ。そんな姿を見て、ルチャブルも思う所があったようだ……。

 開演までの間、ルチャブルはダークルチャに代わり、サトシ相手に芝居の練習をする。
 サトシが普通に“からてチョップ”的なことをしているのはさておき、そんなルチャブルの姿を見て、ダークルチャも思う所があったようだ……。


 とうとう本番。
 スーパーポケモントルファンが全国2000万人もいることに驚きつつ、客席にいるロケット団の(主にムサシの)はっちゃけっぷりに失笑しつつ、ついに幕を開けた舞台!

 ……何やねんお前ら!?

  ムサシ  「なんですかぁと言われても……」
  コジロウ 「目立ちたがりは生まれつき……」

 おい特殊口上来たぞ。スパン短くないか? 本来の話数通りで行けば、ラプラス防衛隊の特殊口上からまだ2回しか経ってないんだぞ?
 しかし、やはり“本来の”七五調の口上の方がしっくり来る。あれを考えた首藤さんは偉大だな……。

 スポットライトを奪うとかなんとか言っているムサシはさておき、舞台を荒らされまいと、ルチャブルとダークルチャが颯爽と登場。
 対するロケット団は、いつものようにマーイーカバケッチャを繰り出すが、ここで、ピカチュウが空気を読み、“サイケこうせん”1発でダウン。ロケット団の相手は、ルチャブルたちが担うことになる。

 しかしダークルチャは、以前怪我した箇所であろう足を庇い、攻撃を受けてしまう。

 その時だ。

 ルチャブルとダークルチャが手を取り合い、協力する姿勢を取ったのだ。
 お互い特訓、練習風景を見て、思う所があった2匹。この舞台を成功させたいという想いが2匹を繋げたのか、見事と言えるバトルを繰り広げた。
 2匹が腕を組んで回転し、その反動で攻撃する様は、2匹が互いに協力しなければできない業だ。
 ラストは物理ワザである“フライングプレス”で爆発し、ロケット団を退散させた。……なんで爆発したんだろ。


 とまぁ、当然観客は、これが芝居であると勘違い。ポケモンではよくあるパターンだ。

 そして本番。想像以上にルチャブルが緊張していて意外だった……とか思っていたら、舞台セットから落下。……これ事故だろ。
 すると、悪役であるはずのダークルチャが、倒れるルチャブルに手を差し伸べた。台本無視である。
 そして、ルチャブルとダークルチャは、ブルーそっちのけで、バトルを始める。それは芝居のバトルでは無い、全力ででぶつかり合う、本気のバトル。

 2匹の勝手な行動にナレーションも止まり、舞台ではただただ2匹がバトルしているだけだが、その熱い光景に、観客が掛け声を始める。

 舞台の上で、多くの歓声を受けながらのバトル……それはまさしくプロレス、ダークルチャが以前行っていた、格闘バトル大会のフィールドそのものだった。

 この、舞台がリングに変わっていく描写が鳥肌ものだった。
 ここの部分だけで、ルチャブルだけでなく、ダークルチャも本気でバトルしていることが伝わって来るし、それを懐かしんでいる、楽しんでいるといった心情が伝わってくる。
 芝居の登場人物を表す「シャーイニング!」の歓声が、描写がリングへと移り変わっていくにつれ、ごく一般的な歓声に変わっていくのも、芝居では無く“本気のバトル”をしていることを裏付けている。

 リング上でぶつかり合う2匹は、まさしく本気そのもの。
 カールも言う、ダークルチャのこの表情は、久々に見たと。

 ルチャブルの“とびひざげり”が決まり、リングに倒れ込むダークルチャ。
 すると歓声はダークルチャを応援するものへと変わり、ダークルチャは立ち上がる。この展開、まさしくプロレスではないか。

 シトロンが言うには、ダークルチャがルチャブルに合わせている。
 しかしカールは、ダークルチャがルチャブルの熱さに触発されたと言う。
 どちらが正しいかは分からないが、芝居を忘れ、リング上で熱いバトルを繰り広げる2匹。


 けど、そろそろ芝居に戻る時間だ。
 そんな2匹の心情を現したのか、フィールドはリングから舞台に戻る。

 ルチャブルが“フライングプレス”で決めにかかるが、ダークルチャはそれを回避。2匹は取っ組み合いの格好となる。

 そこでダークルチャは目を瞑り、何かを叫んだ。

 カール曰く、何を言っているか分からない。しかし、ダークルチャは楽しんでいる。そして、この時間がずっと続いて欲しい、と。

 ……アカン。泣けてきた。
 怪我で一線を退いた格闘チャンピオンが、舞台ではあるが、過去の記憶を取り戻し、本気のバトルに講じる。一時ではあるが、それを全力で楽しみ、その喜びを叫んで伝えるなんて……なんて熱い奴なんだ、ダークルチャは!



 ▲ 決着間際、「ありがとよ」と言ってるようにも見える。


 そして、互いの“とびひざげり”が衝突。
 これも演技では無く、本気のぶつかり合いだったんだろう、ダークルチャが倒れ、芝居もフィナーレを迎えた。
 
 ラストのラストで、今度はルチャブルから、ダークルチャに手を差し伸べた。
 全力で戦い抜いた戦友に敬意を表したその姿。スポットライトに照らされるルチャブルとダークルチャの勇姿には、観客でなくとも、大きな拍手を送りたい。


● 総括
 ごく普通の日常回……かと思ったが、まさかここまで熱い展開になるとは……。
 怪我をして一線から退いたダークルチャブルが、ルチャブルとのバトル(芝居)で当時の感覚を取り戻していく様、そして舞台がリングに変わる演出は、思わず声が出る素晴らしさだ。
 最近影の薄かったルチャブルを魅せたこの回は、日常回の中でも特にレベルが高かった! そしてルチャブルが好きになった話でもあった。


● おまけ
 例のシーンを見て、直感的に思い浮かんだ画像を再現してみた。

 ネタ画像として、ご自由にお使いください(笑)