ポケモンXY感想−50話目

第24話 「海底の城! クズモードラミドロ!!」


 韓国船沈没事故の影響でお蔵入りを噂されていたクズモー回。事故から7か月が経ち、ようやく放送される運びとなった。
 ショウヨウジム戦でサトシが使った“がんせきふうじ封じ”。これの誕生秘話が描かれているだけに、期待は大きい。

 サトシ達一行は、ナレーション通り海岸で楽しいランチタイム。本当にメンバーたちが楽しそうで、見ていてほっこりする。


 ▲ 懐かしい鳥がいる


 食事後、さっそくバトルの特訓をしようとするサトシだが、セレナが釣竿を取り出した。

  サトシ 「それって、コウジン水族館で貰った?」
  セレナ 「えぇ。せっかく海に来てるんだし、トレーニングばかりじゃ息詰まっちゃうでしょ?」
  ユリーカ 「さんせー! だってだって、可愛いポケモン釣れるかも!」
  シトロン 「ここで水タイプのポケモンを捕まえれば、ザクロさんに、より戦いやすくなりますよ!」

 せっかく海に来てるんだから泳げ! 釣りはいいから泳げ!
 ……と思ったのは、自分だけでは無いはずだ。


 釣りを始めたサトシ達。
 無意味にシトロンのメガネが光ったのはおいといて、早速サトシの竿がヒット!


 ▲ どことなくイケメン

 釣り上げたのは、海藻に見えて、クズモーというポケモンだった。
 怪我をしているらしく、ユリーカが絆創膏を貼ってあげる。
 (ところで、自分は絆創膏のことを“カットバン”と呼んでいるのだが、それで通じないことがあった。地域柄の呼び名なのだろうか、カットバンって?)

 ……が、直後に暴れだすクズモー。そりゃあ……ポケモンに限らず野生生物なら、人間に捕まったら暴れますわ。
 そして攻撃に転じるクズモー。“ヘドロばくだん”的な何かを連続で繰り出し、ピカチュウが敵じゃないと説得しに行った途端、“どくどく”に切り換えると言う狙ったかのような行動。こいつ……出来る!


 ▲ やっぱり見えぬ


 ピカチュウを猛毒状態にしたところで、クズモーは退却。サトシ達が襲ってこないを分かったからなのか。

 毒状態は厄介で、ゲームだと、戦闘終了後も一定間隔でダメージが削られ、やがて瀕死状態になる。……最近は違うらしいが。

 急いでポケモンセンターに向かうサトシ達だが、車で通りかかった夫婦が、毒消し治療をしてくれた。
 夫婦の名はエディとリンジィ。作画からして漂う、ポケモンとしての場違い感。

 水中考古学者である夫婦は、この辺の海域を調べるために訪れたらしく、カッスラー号と言う沈没船の調査も兼ねているようだ。
 はるか沖合で沈没したカッスラー号が、潮の流れに乗って近海に運ばれてきたと言う仮説を証明するため、という、少々子供には難しい内容。
 けれどそれをユリーカが「海の探検ね!」と、サラッと集約する脚本には好感が持てる。

 放送延期の所以とも言える、沈没船カッスラー号。昔、氷山に激突して沈んだと言う、タイタニックとしか思えない不運な船。ポケモン界で沈没した船は、サントゥアンヌ号に続いて2隻目となる。
 そう言えば無印編のサントゥアンヌ号は、悪天候の中航海し、気付いたら沖合に流され、船長が「この船は沈まない」と言いながら先に逃げようとしていた。まさに韓国セウォル号。アニメだから笑って許されたサントゥアンヌ号沈没も、まさか17年後に同様な事件が起ころうとは、誰が予想しただろうか。

 サトシ達は、調査に付き合いたいと申し出た。別にピカチュウの治療のお礼とかではなく、ただただ単純に行きたかったらしい……。


 海流の状況により、渦が消えたタイミングを見計らっての調査開始。
 探査艇で海に潜ることになるが、サトシが、セレナが、ユリーカがそれに乗りたがる。

  シトロン 「それでは……誰が乗るか公平かつ厳正に決めましょう!/名付けて、“恨みっこなしよ、くじ引きマシーン”です!」
  サトシ 「科学ってすげー!」
 久々にそれ聞いた。  
  シトロン 「左か右か、自らの運命を委ね全てを託す、科学的あみだくじです!」

 ……いや待て。
 “科学的あみだくじ”って何だよ!?
 いいじゃん紙とペンで! なぜそれを発明でやろうと思ったんだよ!?

 しかもあみだくじの概念ガン無視である。
 けど、爆発しなかった数少ない発明として、評価すべきなのか……。


 結局、サトシとセレナが探査艇に乗り込み、深海へと繰り出した。
 違和感しかないハリーセンテッポウオ、オクタンなど、海のポケモンが数多く生息している様を見て、セレナは高テンションで感激の様子。純粋に旅を楽しんでいるんだろうな。

 さらに深く潜っていくと、急な海流を発見した。この海流こそ、夫婦が仮説を立てたものであって、この海流の行きつく先に、カッスラー号がある可能性が高い。
 すると、海流に乗って別の沈没船が現れた。それに続くのは、さきほどサトシ達を襲ったクズモーたち。額の絆創膏が目印だが、よく剥がれないな、あれ……。


 クズモーたちを追うと、そこには、大きな沈没船が鎮座いしていた。それは間違いなく、カッスラー号だ。

 そこにドラミドロが出て来て、先ほどの沈没船とカッスラー号を“ようかいえき”で溶接した。
 ……そう、クズモードラミドロは、沈没船を使ってポケモン達の住処を作っていたのだ。
 どんだけ沈没してるんだというツッコミはさておき、沈没船が魚たちの住処や餌場になるという現実の設定を活かした脚本には、流石だなと思った。“ようかいえき”で溶接というのも、なかなかリアル。「海底の城」というタイトルにも繋がる、旨い見せ方だ。


 と、カッスラー号から光が漏れだしているのを発見した。
 まぁロケット団が原因な訳で、彼らは船体に穴を開けて内部に侵入。保管されている宝を盗むらしい。
 なんだろう。これだけなら、ロケット団が悪いことしているとは思えない……。

 当然サトシ達も追うが、クズモードラミドロは敵と勘違い。そりゃ、こんな海底に人間が来るなんて滅多に無いだろうからな。
 しかし、例の絆創膏クズモーが、サトシ達は敵じゃないと伝えたため敵対は回避。さっきの攻撃的な態度はいったい何処へ行ったと言うのか。

 ロケット団を追って船内を進むと、彼らはすでに爆薬のような何かを設置し終えた所だった。
 きちんと名乗り、装置のスイッチオン。爆薬ではなく、どうやらジェット噴射で金庫ごと宝を船外に押し出すらしい。普通じゃ考え付かないようなことを平然とやってのけるロケット団である。

 ジェット噴射の煙が煙幕となり、その隙に逃げるロケット団
 追いかけるクズモーたちに、サトシはケロマツを出して加勢させる。

  リンジィ 「逃げましょう! 穴が開けば、水圧で一気に海水が入ってくるわ!」

 ……こりゃ放送できなかった訳だ。
 沈没どうこうより、船内に空気が残っている→穴が開いて海水が入って空気が奪われるといった流れが問題だったと見るべきだろう。
 韓国船のケースでも、空気が残っていれば助かる可能性があると囁かれていただけに、意図的に船を破壊して海水が入ってくるなんて展開、放送できる訳がない。
 海外の事故に何故アニメが……なんて思ったりもしたが、蓋を開けてみれば、この展開を放送したらクレームものだろう。

 もっとも、あそこまで被害を大きくした原因は、各国の救助を拒んだ韓国政府にあるだろう。事故当日の朴大統領の足取りが掴めないことを記事にした産経新聞の方が拘束されることを見ても、それは明らかだ。
 そして、日本で問題なく航行していた船に無茶な改造を施し、検査もろくにせず、無茶な操舵をした船舶関係者の責任も大きい。
 一番の被害者は乗客なのに、お隣の国は、果たしてこんな対応で良いと思っているのだろうか。


 海水が入り込みつつあるカッスラー号は、バランスが崩れて崩壊の危機に直面する。

 ここからは、海のポケモン達の絆が描かれていた。
 ドラミドロが指揮を執り、チョンチー、ラブガス、コイキング、オクタン、サクラビスママンボウなど、みなが協力して、カッスラー号を支え、崩壊を食い止める。
 バランスが取れて船が直立したところで、今度は人間の知恵の番だ。適当な鉄板を、金庫が突き破った穴にあてがい、ドラミドロの“ようかいえき”で溶接。
 これで浸水は収まり、ポケモン達の住処の崩壊は免れた。

 時間にしては短かったが、ポケモンと人間の協力で困難を乗り越えると言う展開は、ベタながら熱くなる。特に今回のような海底は、人間の行動が制限されるため、野生ポケモン達の力がより発揮されてGood。
 沈没船を住処にすると言う現実でもある設定と、ポケモンだからこそ出来る人間との協力。これぞアニポケの醍醐味では無いだろうか。


 さて、金庫をゲットして浮上したロケット団は、渦潮に巻き込まれて、吹き飛ばされて、金庫を落として、戦わずして退却! そこそこの活動をしていたのにこの撤収方法は、何気に新しい。

 一方、ケロマツクズモーは、渦潮の近くに取り残されたままだった。
 しかしケロマツは怯むことなく、クズモーを背負い、浮遊物を飛び移って、飛び移って、サトシの胸へと飛び込んだ。

 一件落着!


  ユリーカ 「クズモーを助けてジャーンプ! カッコ良かったよケロマツ!」
  シトロン 「あのジャンプと高さは驚異的です。いやぁお手柄でしたね!」
  サトシ 「それって……ザクロさんとのバトルで使えるかも。そうだ! きっと使えるぞ!」

 ナレーションにもあったように、サトシはザクロ戦の対策を掴んだようだ。
 内容はもう皆さんご存知、“がんせきふうじ”の岩を足場にし、連続ジャンプで回避するというもの。
 今回のケロマツの活躍で、“物体を飛び移る能力”と、“より高く飛ぶ能力”の2つを、バトルに活かしたのだった。


 ……いや、ちょっと待ってほしい。
 それが“がんせきふうじ封じ”の元になったのは分かった。もっと他に、明かさなければいけない内容があるんじゃないかい?


 〜 ショウヨウジム戦より 〜

  ザクロ 「岩タイプの凄みを味わって貰いましょう。“がんせきふうじ”!」

  セレナ 「サトシ……」
  シトロン 「特訓の成果が試される時が来ました!」
  ユリーカ 「大丈夫! 行けるー!」

  サトシ 「ケロマツ! 岩をよく見て飛べー!」

  ザクロ 「これで分身は消えます。“がんせきふうじ”から逃れられますか?」

  サトシ 「今だケロマツ! 特訓の成果を見せてやれ!」

 ここでケロマツは、岩を足場にして飛び移り、イワークの上を取る。

  ザクロ 「こんなことが……!?」

  サトシ 「名付けて! “がんせきふうじ封じ!”」

  セレナ 「やった! “がんせきふうじ封じ”!」
  ユリーカ 「いけいけケロマツー!」
  シトロン 「これはサトシ達の大きな自信に繋がりますよ!」


 ……はい。

 なぜ誰も“がんせきふうじ封じ”というネーミングに突っ込まないのか。
 なぜ、さも自然にそれを受け入れたのか。

 今回のクズモー回で、“がんせきふうじ封じ”が既に出来上がっているものとばかり思っていたが、実際は、この話とジム戦の話の間、アニメでは語られていないシーンで特訓が続けられていたようだ。

 要するに、“がんせきふうじ封じ”の“掴み”を、このクズモー回で得たといったところだろう。
 出来れば完成までの道筋も描いてほしかったところだが……。

 何だろう。“がんせきふうじ封じ”の詳細が語られる話だと思っていただけに、何となくモヤっとしたものが残ってしまった感がある……。


● 総括
 約7か月遅れて放送となったクズモー回。お蔵入りにならなくて本当に良かった。
 海底のポケモン達が、力を合わせて仲良く生息している様は、アニポケならでは。沈没船を住処にしているという点や、ゲストが発する専門用語などから、なかなかリアリティな話だった。
 ……が、“がんせきふうじ封じ”の伏線としては、少し弱かったかなという印象を受ける(特にメンバーの反応)。そこはご愛嬌かな。