アニポケXY1周年特集 − No.10


★ XY放送1周年総まとめ! ★

 9回にわたってまとめてきたベスト3でしたが、皆様の思い描いたランキングと比べていかがでしたか? 割かしマイナーな点も取り上げて来たので、おそらく“知ったこっちゃねーよ!”的な反応の方もいらっしゃったかと思われますが、管理人の都合による独断と偏見の選考なので、深く考えないでください。


 2013年10月17日に放送開始した“ポケットモンスターXY”。従来までのシリーズを受け継ぐ形での放送ですが、色々な面で、新たな取り組みを仕込ませていたことが分かります。

 まず第1話で、サトシの所謂レベルリセットが無かったことが大きいでしょう。シトロンとのバトルでは、ピカチュウは互角に渡り合い、戦略を見ても、それはまさしくサトシのもの。そして重要なのは、ユリーカに“サトシすっごく面白い!”と言わせたことにあると思います。
 スペシャルで続く第2話では、ガブリアスを助けるためにプリズムタワーに上り、夕日を背に超イケメンっぷりを見せてくれます。そして、タワーから落ちるピカチュウを、自分の身の危険を顧みずに助けに行く。それがテレビで放映される。

 以上、ユリーカの言葉、イケメンシーン、ピカチュウを助ける想い、テレビに映る。この4点は、サトシのカッコよさを存分に描いていたのではないでしょうか。
 要するに、“サトシがカッコいい!”と言う掴みを初放送時点で視聴者にアピールした訳です。従来の、初戦で負けて、強くなることを誓う……方式とは、全くの正反対です。
 これほどまでのサトシ推しに、XY編に惹きこまれた方も多いでしょう。

 初放送時点でアピールされたことはまだあります。
 バトルの迫力、CGを使った背景のレベルアップ、それに伴うバトルシーンの臨場感、そして街の描写と通行人、車の配置。これらから言えることは、アニメが綺麗になった! これに尽きるでしょう。
 そして、ロケット団の立ち位置も、この時点で描かれています。BW編は震災等の影響もあって中途半端な扱いになってしまいましたが(ケルディオ映画で喋らなかったのは本当に意外だった)、今回はコミカルさに立ち戻り、しかし、メカや作戦ではシリアス面も継続すると言う、良いとこどりのキャラになったのです。


 次にヒロイン、セレナの扱いですが、これは本当に旨い動かし方をしていると感じました。

 まず放送前の事前情報で、セレナとサトシは過去に会ったことがあると押し出し、所謂幼馴染設定に、視聴者は大いに関心を持ったでしょう。その理由は7話まで引っ張りますが、2話〜7話までの引っ張り方が旨いこと旨いこと。
 第1話、2話の時点では、サイホーンレースの練習をしていたものの、セレナはいたって普通の女の子だった訳です。それが、サトシをテレビで見たことで、彼に会いに家を出た。短い一人旅ののち、第5話でサトシ達に合流します。
 5話のラストで、セレナはサトシに、自分のことを覚えているか切り出します。結果は予想通りでしたが。そして6話のラストでは、サトシたちの方から、今後セレナはどうするかと切り出します。……こんな引っ張り方、今までのポケモンであったでしょうか。

 徐々に徐々に視聴者を引き付け、そしてあの第7話です。ポケモンらしからぬと言うか、もはや異常事態な内容に、視聴者は驚かされたはずです。
 このような引っ張りと、サトシに好意を抱いていると言う、今までのポケモンでは見られなかった設定で、セレナの印象付けも完璧でしょう。

 そんなセレナは、話が進んで行くうちに、とんでもない女子力の持ち主だと判明していきます。料理、デザート、刺繍などなど、もはや完璧な女子です。これまでのヒロインに見られた“どこか抜けた可愛さ”ではなく、“完成された可愛さ”で攻めてきた訳です。これまた新たな試みです。

 そしてセレナの扱いで一番関心させられたのは、放送1年にして、やっと夢を見つけた&新たなポケモンをゲットしたと言うことです。
 この点だけは、これまでのヒロインとは全く逆で、欠点に挙がる事項です。しかしこれ、よくよく考えられた設定なんだと感じます。
 そもそもセレナは、普通の女の子だった訳です。カスミ、アイリスは別として、ハルカ、ヒカリも普通の女の子だった訳ですが、セレナとは明確な違いがあります。
 それは、シリーズ開始の時点で、ポケモンを貰うことが決まっていたか否かです。
 セレナはサトシに会いに行くため、ポケモンを貰った。すなわち、ポケモンを貰って旅することなんてこれまで考えていなかったと示唆されます。

 そう言った面で、完全に普通の女の子だったセレナは、サトシ達との旅で、色々なことを学んでいきます。そして、夢について考えるようになっていく……。
 放送1年目で夢が決まったと言うのは、この“普通の女の子感”を非常に上手く表現したものなんだと、私は考えています。それは長期放送アニメであるからこそできるワザで、逆にポケモンくらいでしか通用しないものだとも思います。
 要するに、これは脚本家さんたちにとっても“チャレンジ”だったはずです。これを見ても、XY編がいかに力を入れられているか、大いに伝わってくるでしょう。


 シトロンとユリーカ、兄と妹という組み合わせをレギュラーに加えたのも、また面白い設定だと感じます。
 料理、知識が豊富な点で、シトロンはタケシの役割を果たしますし、ユリーカもシルブプレでまさかのタケシ枠。濃いキャラのタケシ枠を、2人1組で宛がったのは、旨い設定だと思います。しかも、シトロンは発明、ユリーカはポケパレル的要素と言う、タケシ枠だけで終わらない付加価値を付けて。

 XY編のレギュラーキャラは、それぞれの魅力を惜しみなく視聴者にアピールし、そして各キャラの役割が明確という、非常にバランスの取れたパーティに仕上がりました。これは見る側にも安心感があり、好感が持てます。


 キャラたちの他に、ストーリーでも、XY編は一味違います。
 まず“お決まり展開”にならないこと。ケロマツが“かげぶんしん”を習得したり、おばあさんが亡くなっていたりと言うのが、これに当たります。

 そして、原作キャラを魅力的に描いていると言う点も、大いに評価できるでしょう。
 メガ進化を自分のものにするべく、長きに渡って奮闘し、一時レギュラー陣に加わって旅をしたコルニは言わずもがな。ビオラとザクロは、ジム戦だけなくバトルシャトーにも登場し、服装も変えると言う、“使い捨て感”が全く無い扱いでした。
 これまでのジムリーダーの登場は、良くてせいぜい2話程度。DP編のスズナは恵まれていた方でしょう。それを、服装まで変えて複数話に登場させるというのは、スタッフがキャラを大切にしていることを実感できます。各々の信念が丁寧に語られているのも、それを裏付けています。


 他にも、ストーリーが少し難しくなった、という点に注目です。
 特にコルニ編では、キャラの動きより背景となる設定を重要視した場面があります。これは小さい子にとってはマイナスでしょうが、我々のようなポケモン第一世代から見ると、キャラの背景を考えたくなるような設定は大歓迎。XY編からの新監督さんがポケモン世代と言うことで、古くからのファンにも配慮したストーリーを取り込んでいるのだはないかと推測できます。
 何にせよ、視聴者層の幅を広げるような改革に、非常に好感が持てます。


 以上、長く語ってしまいましたが、ポケモンアニメの新時代到来、と言っても、決して過言では無いと思います。

 今後まだ数年続くXY編。今まで以上の進化、惹きこまれる展開や描写を期待するとともに、今回の1周年記念特集の筆を、ぞろそろ置くこととします。