2014年映画「破壊の繭とディアンシー」感想

個人的評価:★☆☆(普通)

 2014年、アニメがXY編に移行し、映画もそれまでの「ピカチュウ・ザ・ムービー」から「ポケモン・ザ・ムービーXY」として装いも新たにスタート。その第1作は、ディアンシーを主役ポケモンとした映画だ。

 今回は、映画公開前のアニメで映画の冒頭数分を放送、連動イベントとして六本木ヒルズで映画の展示会や、みなとみらいをピカチュウがジャックするなど、これまでとは比べ物にならないほど大々的にアピールを行っていた。
 また、前売り券でダークライ、映画館でディアンシー、さらにはダウンロードゲームとして“1000匹の盗賊”をリリースするなど、これまでのシステムも継続している。


 さて、ストーリー的には、とても分かりやすいものだった。ディアンシーたちが暮らす“ダイヤモンド帝国”の聖なるダイヤが崩壊寸前で、それを作り出せるポケモン――ディアンシーが、聖なるダイヤを作れる力を付けるため、ゼルネアスに会いに行くというお話し。
 サトシ達は、ひょんなことからディアンシーに同行し、彼女を付け狙う盗賊たちから守りながら、ゼルネアスの元を目指して行く。

 今作の見どころは何と言っても、ディアンシーがメガ進化するシーン。サトシ達との旅を通じて成長したディアンシーの集大成とも言える姿だ。……これを映画公開前まで告知していなければ、感動はもっと上がったんだけどなぁ。

 また一方で、セレナ、ユリーカのファッションショーも十分に見ごたえあり。一応水着も含まれていたし、どれもホント似合っていた。欲を言えば、サトシたちの反応も欲しかったところだ。

 さらに、主人公たち全員に見せ場があったのも好感が持てる。
 サトシに圧倒的割合を注がれているのはいいとして、セレナはサイホーンを乗りこなし、ディアンシーの保護に一役買う。まさか映画内までサイホーンレーサーの設定を持ってくるとは意外だった。
 一方のシトロンは、ショッピングモールでメレシーからディアンシーを逃がすため、無限梯子のような発明が活躍。構造がどうこうより、爆発しなかったことが何より大きい。もっとも、あそこで爆発していたら、単なるテロ行為である。

 衣装面でも、セレナのジャージ姿(何故持ってたし)、シトロンとユリーカはミアレジムバッジが描かれた服が登場するなど、普段とは違った一面を見ることができた。特にシトロンは普段がアレなので斬新だった。ユリーカは何故下を穿かなかったのか。

 その他、ゼルネアスやイベルタルの登場シーン、バトルシーン、破壊シーンは、フルCGで臨場感MAX! ポケモン映画のCG技術は、年々進歩しているように思える。

 設定面では、イベルタルによる大破壊が起こった背景が詳しく語られなかったものの、シトロンによる「自然の摂理の一部」という説明が入ることで、どこか納得できるものに。
 ラストにゼルネアスが大樹に姿を変えるシーンもまた、セレビィとは違った側面で自然の一部となることに、ポケモンの神秘さを物語っている。
 破壊があるから創造もある。イベルタルとゼルネアスが自然界にどう作用しているのか、この2匹の行いは自然の摂理の一部なのだと、視聴者に考えさせる意図があったのだろう……か?

 どうでもいいことだが、ポケモンと一緒にバスに乗るシーンがあったが、これ恐らく、ポケモン映画・アニメとも初だろう。


 さて、良い点があれば、当然、疑問に思える点も出て来てしまう。子供向け映画なので大きな突込みは野暮な話だが、一視聴者目線から気付いたことを、いくつか挙げていく。

 まず、ディアンシーを狙う盗賊。マリリン、ライオット、ミリス、アルガスだが、ロケット団も含めると、敵が多すぎたように感じる。上映時間的に見ても、この4組が出ているせいで、少々窮屈に思えてしまった。
 もっとも、最後にはみな改心している点には好感が持てた。マリリンとライオットに至っては結婚するようで、ここまで悪役にハッピーエンドを与えたのは、今作が初めてではないだろうか。

 もう1つ、ピカチュウの石化シーンは、少々蛇足だったような気がする。ゼルネアスによって蘇るまで、ものの数分。感動を狙いに行ったと言われても、仕方ない気がする。
 こちらも上映時間の制約があってのことだろうが、同じ制約がある中であれば、わざわざピカチュウに災難を振りかけなくても、バトルシーンやキャラの掘り下げに使った方が、現実的なような気もする。


 以上のような観点から、「破壊の繭とディアンシー」の個人的評価は【 普通 】と判断した。

 もっともこれは、あくまで個人的な評価。
 さらに言うと、自分のようなポケモン第一世代、小さな子供にも納得できるストーリーというのは、どうしても無理がある。
 それもふまえ、【 ★☆☆(普通)】というのは、別に最低点的な意味合いではなく、【普通に面白かった】と受け止めて欲しい。